日本ハムが交渉権獲得の王柏融 稀有なキャリアとNPBへ適応への課題は…

2年目に打率.414を記録し、3年目には2年連続4割をマークし三冠王に

 その後も野球賭博などの事件は起こったが、CPBLは、国内で信頼を回復させつつある。しかし、依然としてアマチュアの有望選手はCPBLには進まない。CPBLの選手構成は、アマの二線級の選手と、NPBやMLB、マイナーでプレーしたのちの帰参組、そして外国人選手からなっている。日本でプレーした林威助(元阪神)や、陽耀勲(元ソフトバンク、陽岱鋼の兄)なども、CPBLに復帰して主力選手として活躍した。実力的にもCPBLは、台湾のアマチュア野球よりも弱いといわれていた。事実、台湾ウィンターリーグなどでもそういう結果になっている。

 王柏融も、CPBL以外のステージに進めると思われていたが、2015年6月のドラフトでラミゴモンキーズに入団。関係者を驚かせた。王柏融の実力は、CPBLでは群を抜いていた。台湾は6月にドラフトが行われるため、1年目は29試合の出場にとどまったが、2年目にいきなり打率.414で首位打者。200安打も記録した。これはともにCPBL最高記録。3年目の2017年は、打率.407、31本塁打、101打点で3冠王に輝き、4年目の2018年も打率.351(4位)をマークした。

 ただ、王柏融の突出した打撃成績の背景には、CPBLが近年、極端な「打高投低」に偏ったことがある。2018年のCPBLのリーグ打率は.294、平均防御率は4.76。投手陣が弱かったことがこの大記録に結びついたことは間違いない。しかし、それでもこの成績は特筆すべきものだ。王が、CPBL史上初のポスティングでNPBに移籍することになったのも、その破格の成績による。

 王は181センチ90キロ、右投げ左打ち。大型とは言えないが、シュアな打撃に加え、俊足でもある。台湾野球はもともと四球をあまり選ばないが、そんな中で選球眼もある。問題は、優秀な投手との対戦が少なさだろう。NPBには多彩な変化球を操る投手がたくさんいる。外国人打者はその配球に苦しむが、王柏融もこれに苦しむだろう。また左投手にも苦しむだろう。CPBLでは今季の2桁勝利投手は5人いたが、このうち4人が外国人投手。そしてすべてが右投手だった。NPBの左投手の鋭いスライダーやチェンジアップなどに対応できるかどうかが課題になろう。

 さらに王柏融は、外野守備が得意とは言えない。4シーズン、410試合の守備率は.990だが、捕殺は合わせて16しかない。優秀な外野手がそろっている日本ハムで外野を守ることができるかどうか。NPBの守備のレベルになるにはかなりの努力が必要だろう。様々な課題はあるが、王柏融の移籍は、日本と台湾の野球史上でも、歴史的な出来事だ。彼が活躍すれば、台湾でのNPB人気はさらに高まる。またCPBLに進む有望選手も増えるだろう。来年の活躍を楽しみに待ちたい。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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