広島の新井貴浩氏が語る丸「もう真っ直ぐな男」、鈴木は「凄いなあ」
現4番の鈴木を絶賛「4番の苦しみは4番を打った人にしかわからない」
2018年シーズンを最後に、20年間の現役生活にピリオドを打った広島の新井貴浩氏。DAZNでは、オフの新番組「Home of Baseball」の配信を開始。「カープ優勝の軌跡」(11月30日~投手編、12月7日~守備・走塁編、12月14日~打撃編)では新井氏へのロングインタビューを行った。2016年に現役引退した黒田博樹氏とともに、広島のレジェンドとして巨人に続く2球団目となるセ・リーグ3連覇に貢献した新井氏が、カープへのチーム愛、選手たちとの絆、自らの歩んできた道について語り尽くす。第3回はカープの4番を張ってきた新井氏が、現在の4番打者・鈴木誠也、そして2年連続セ・リーグMVPに輝き、FA権を行使して巨人に移籍することを表明した3番・丸について語った。(インタビューは丸の巨人移籍決定前におこなわれたもの)
広島のリーグ3連覇が始まった2016年は新井氏が4番に座り、打率.300、19本塁打、101打点と優勝の原動力となった。そして2017年、鈴木が22歳の若さで新井氏の座ってきた4番を受け継いだ。
「凄いなあと思いますよね、あの若さでね4番を任されて……。4番2年目ですか、もう十分な成績を2年とも挙げてますから、本当に素晴らしい選手だなと思いますね」
野球において「4番」というのは特別な響きを持つ。そのチームで、もっとも打撃に優れた選手が座る打順。走者をかえす得点源であることを求められ、ここぞという時に打って当たり前、結果が出なければファンやメディアの批判にされされる。新井氏は阪神時代も含め、長年、4番の重圧と戦い続けてきた。「前4番」と「現4番」の間では、どのようなコミュニケーションがとられているのだろうか。
「いや、特には(アドバイスすることは)ないですね、自分もあまり小さいことで言いたくないし、あの若さで立派に(4番を)務めているので」
鈴木への気遣いがにじむ言葉の後に、新井氏は続けた。
「でも、4番の苦しみって4番を打った人じゃないと分からないんですよね」
4番の苦しみは、4番を打った人じゃないとわからない――。自らの経験がにじむ言葉だ。2003年、新井氏は金本が阪神に移籍した後の4番に座り、深刻な打撃不振に陥った。結局、このシーズンは打率.236、19本塁打、62打点。3部門すべて数字を落とし、翌04年も打率こそ.263と上向いたものの、打席数は半減し規定打席に届かず。本塁打はわずか10本、36打点と大きく期待を裏切った。05年、43本塁打で本塁打王のタイトルを獲得してようやく4番に定着。押しも押されもせぬカープの4番となるまでには3年という時間を要した。
鈴木は昨年、4番に座って打率.300、26本塁打、90打点。4番打者としても十分な成績だが、これでも2016年自らの成績(打率.335、29本塁打、95打点)からすれば、数字を落としている。
「彼(鈴木)が本当に、これは精神的にちょっと参ってるなっていう時は、僕から声をかけます。でも、そういうことが今年に限ってはあんまり見られなかったですね。去年の誠也より今年の誠也のほうが精神的にも成長してると思いますし、見てて頼もしいですよ」
今年8月30日の巨人戦(東京ドーム)では、疲労がたまって欠場した鈴木に代わり、新井氏が「4番・一塁」で先発出場。言葉以外でも、陰に陽に若き4番をバックアップしていた。