3連覇も丸移籍で変革期迎える広島 日本一への鍵を握る2人の「ハズレ1位」

真のレギュラー定着へ正念場を迎える立場の野間

 野間は14年ドラフト1位、日本ハム入りした有原航平の競合抽選に外れた広島から指名された。中部学院大時代から驚異的なスピードに定評があった。チームは投手優先の獲得方針であったが、緒方孝市監督から「映像を見て感じるものがあった」というプッシュもあったという。実際、大きな期待を受け1年目から127試合に起用された。しかし2年目は21試合、3年目はおもに代走、守備固めで98試合の出場となった。そして迎えた18年、開幕直後に不動のレギュラーであった丸佳浩、鈴木誠也が故障。チャンスをもらった形の野間が結果を残し、その後も試合に出続けた。

「足と守備が強みと言われてきましたけど、それだけではなく打てないとまったく意味がない。というか試合にすら出られないと思う。それくらいうちの野手陣はレベルが高い。足を活かしてというのももちろんだけど、しっかりと打ち返すことができるようになりたい。打席では右肩を開かないで最短距離で打ち返す。これを徹底的に意識している」

「身体は少し大きくなったと思う。大きくなった当初は重くてスピードは大丈夫かな、とも思った。でもその部分はやっていくうちに慣れてきたというか。筋力もその重さに合わせてついたと思うので、自分の中の感覚ではスピードに関してはまったく変わらないと思う。長打も出るようになったけど、それでスピードまでなくなったら意味がないと思う」

 それまで見受けられた、転がして一塁を走り抜けるような打撃でなく、しっかり振り切ったスイングができつつある。5月19日のヤクルト戦では満塁本塁打も放ってみせた。野間本人も少しずつであるが手応えを感じているようだが、東出コーチが求めるレベルは遥か遠くにある。

「野間は現状ではまったくの発展途上。18年に多少、結果が出たのは、たまたま良い状態の時に試合に出て、良い結果も出た。それがしばらく続いたので試合にも出続けることができた。打者としてはまだまだ、だから、これからさらにレベルアップする必要がある。そうしないと苦労するという話はよくしています。だからこそ、このオフからが重要になる」

 同じ左打者で結果を残したが、安部と野間は大きく異なる。秋季キャンプから強化選手として連日、東出コーチが指導する姿が見受けられる。

「ハズレ1位」

 安部、野間の2人とも世間的にはそう呼ばれる形でのプロ入りだった。しかし、勝負は全てプロ入り後。どんなに華麗な遍歴を抱えていても、言葉は悪いが消えていった選手も数多い。そんな世界で勝ち残るのに何が必要なのか、は本人たちが重々承知している。

 チャンスは準備を重ねた者のみに降り立つ。まさにこれらを体現している選手たちではなかろうか。決して全国区で目立つ存在ではない。しかしこういう選手たちが着実に結果を残すチームは強い。広島に携わるものすべてが、2人の重要性は十二分にわかっている。目指すべき次なる高みは1つしかない。35年ぶりの日本一へ、すでに視界良好である。

(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。

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