3年連続で40回以上の逆転勝利も、投手陣は…データで今季を振り返る【広島編】
4連覇へ向けて若手の成長で「丸ロス」をどこまで埋められるか
◯ポジション別得点力
次に、広島カープの各ポジションの得点力が両リーグ平均に比べてどれだけ優れているか(もしくは劣っているか)をグラフで示して見ました。そして、その弱点をドラフトでどのように補って見たのかを検証してみます。
グラフは、野手はポジションごとのwRAA、投手はRSAAを表しており、赤ならプラスで平均より高く、青ならマイナスで平均より低いことになります。
センター丸、ライト鈴木の大きな貢献が目を惹きます。田中が務めたショート、そして106試合に出場し打率.305、OPS.893と打撃で大きな貢献を果たした會澤翼が主に務めたキャッチャーの攻撃力がプラス評価となっています。
足や守備の貢献は大きいものの、浅村栄斗や山田哲人など並み居る強打者が揃うセカンドの中では、今季の菊池涼介の攻撃力評価はマイナスということになります。また一塁手、三塁手、左翼手の評価もマイナスとリーグ随一の攻撃力を誇るカープにしては、マイナスが目立つグラフとなっています。この状況を把握してか、ドラフトでは高校生内野手を4人指名しており、これを数か年計画で補強しようとする姿勢が見えます。
1位指名は報徳学園の小園海斗。4球団競合となり、緒方監督がくじを引き当て交渉権を獲得しました。小園は甲子園に2回出場、通算打率.433、OPS 1.236と高水準の数値を残しています。18年夏の甲子園での初戦で大会タイ記録となる1試合3本の二塁打を放ち、強烈なインパクトを与えました。俊足で強肩、菊池と同様の深い守備位置をとり、守備範囲が広いのも特徴です。
投手の補強としては、2位に大瀬良の後輩にあたる福岡六大学リーグ・九州共立大学の島内颯太郎を指名しまていす。4年生夏に152キロを記録するなどストレートが持ち味で、即戦力とはならずとも数年後の先発投手陣の一角を狙える好投手と言えそうです。
外野手として6位に東都大学リーグ・亜細亜大学の正随優弥を指名しています。大阪桐蔭高校時代は4番も務め、大学では1年生春からレギュラーとして出場。通算打率.260、9本塁打、OPS.801を記録しています。大きな変動があったカープ外野手陣の一角を狙う可能性がある逸材です。
2年連続でセ・リーグMVP、もとより選球眼の良さで高い出塁率を誇り、今季は歴代4位のシーズン130四球、歴代8位のシーズン出塁率.468を記録。また今季は本塁打39、長打率.627で自身初のシーズOPS1.000超え(1.096)を果たし、カープに大きく貢献してきた丸佳浩がFA宣言し、巨人への移籍を決断しました。来季はセンターとして野間が、レフトには主にバティスタが起用されることが予想されます。また、23歳の西川龍馬、25歳のメヒア、20歳の坂倉将吾などのプロスペクトがおり、彼らの成長によって「丸ロス」をどこまで埋められるかが広島4連覇のカギとなりそうです。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。