堂林翔太と下水流昂―広島4連覇へのキーマンは“後がなくなりつつある”2人

2人の活躍は広島にとっても大きなチャンスに

 自身も長距離打者としてプロ入りした迎コーチは、下水流のポテンシャルの高さを認める。

「長打力に関しては本当にすごい。チームでもトップクラスだと思うし、それこそ日本人離れしている。でもそれを活かしきれていない。やはり確実性の部分。本人もそこは自覚しています。本当にもったいない状態が続いている」

 打撃練習ではボールが軽々とフェンスを超えていく。しかも逆方向となるライト方向への飛距離が出るのも特徴的である。 

「なんとなく僕の現役時代と似ているところがある。最初に本塁打を打ったけど、そこから先に進めなかった。本来ならサヨナラ本塁打を打った後に、トントンと打ってほしかった。だから自分の経験など、すべてを伝えてレギュラーを張れるくらいになってほしいんですよ。それができるだけの実力は備わりつつある」

 山本浩二、衣笠祥雄の時代から続く伝統、右打ちの日本人強打者が2人揃った時のカープ強力打線。鈴木誠也という4番の柱が出来上がった今だからこそ、下水流にかかる周囲の期待は大きい。 

 崖っぷちと好機は表裏一体である。崖っぷちの人間は「なんとかしよう……」と必死に物事に取り組む。すると結果につながる可能性が高まることも多い。

 堂林は高卒ながら2位指名、来年が10年目で28歳になる。下水流は社会人から入団し、来年7年目で31歳に。決して若手ではなく、後がなくなりつつある立場。それは本人たちが一番認識しており、その表れが日常の猛練習につながっている。レギュラーを奪取し大ブレークする可能性も大きい。それだけのポテンシャルを秘めている選手だからだ。

 2人の活躍は、広島に取っても大きなチャンス、力となる。新井貴浩が引退し、丸佳浩がチームから去った。しかし、思い出だけを大事にしている時間はない。過去だけにとらわれているものには、輝かしい現在も未来も決して訪れない。4連覇を懸念する声もあるが、この状況は新たな戦力が生まれる大きなチャンス。それはここまでの広島の歴史が証明している。広島東洋カープは、決して立ち止まらない。

(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。

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