2020年東京五輪は「スタートです」DeNA岡村球団社長が語る新たな球団の在り方
2020年東京五輪は「まったくゴールのイメージはない。スタートです」
球団や球場に新たな価値を生み出すため、2011年に球団を引き継いで以来、さまざまな取り組みを続けてきたDeNA。2020年の東京五輪では、横浜スタジアムで野球の決勝戦などが行われる。栄えある大会に向けて、球場は改修工事の真っ只中だが、2020年はゴールではなく「出発点でしかないですね」と話す。
「政府の計画では、2015年から25年まで10年掛けてスポーツ産業を5.5兆円から15兆円に、約3倍にしようと言っています。そのちょうど真ん中が2020年。そこにオリンピックという国民的行事があるわけですが、これをきっかけに街を変えていこう、ライフスタイルを変えていこう、スポーツ観戦のあり方を変えていこう、といろいろ出てくると思うんです。
だからこそ、まったくゴールのイメージはないですね。スタートです。横浜で言えば、ハマスタ周辺では2020年に横浜文化体育館のサブアリーナ、武道館が完成し、2024年にはメインアリーナができる。2025年には関内駅前にある現横浜市役所の跡地開発が動き出しますし、街がこれから作られていくところ。その中にハマスタがあって、我々のベイスターズがあるとなれば、むしろ2025年や2030年が楽しみで仕方ないです」
伝統や慣例が重要視される野球界の中で、一歩先の未来を見据え、新しいことにチャレンジし続けるには勇気がいるようにも思える。だが、そうすること自体が企業の宿命であり、不可避なものだという。
「球団と球場が核になって、アンモナイトのような巻き貝みたいに大きくなりながら、未来へとつながっていく。そんなイメージなんです。毎年同じことの繰り返しでつなぐこともできるけど、企業というのは新しい価値を創造するための装置であり、新しいことを生み出すのが企業の宿命。DeNAという企業自体が成長期から成熟期に入るところでまだまだ成長すると考えると、新しいことにチャレンジすることは不可避なんですね。球団と球場、街、その他のスポーツ、ライフスタイルと、さまざまなつながりが持てると考えると、可能性は広がります」
何よりも、そう考える根底には自分たち=球団に対する期待感があるからだ。
「2018年は球場の稼働率が97パーセント以上で100パーセント近かったわけですが、これを毎年やるのかって考えると、すごい閉塞感に囚われると思います。でも、リーグ4位だったチームはもっと強くなるでしょうし、毎年のイベントを見直せばもっとお客様にも楽しんでいただけるはずです。オフィシャルホテル提携だったり、追浜のファーム施設の建設だったり、新しい事業を手掛けてきましたが、本質的には我々が満足できているのかということだと思います。昨季、お客様は203万人お越しいただきましたけれど、チームが4位だったことを考えると、私たちがお客様に借りを作った状態だと思うんです。もっと喜んでもらえるでしょ、もっといいものを作れるでしょ、もっと斬新にやっていけるでしょ。そういう自分たちに対する期待感でもありますね」
少し先の未来を見据え、つなぐ球団経営は、チーム編成の面でも存分に発揮されている。(次回に続く)
(佐藤直子 / Naoko Sato)