菊池雄星、西武時代の“引き出し”が復活の鍵 空白の4日間で得た手応えとは?
西武時代の2017年、2段モーションを指摘されフォーム修正を余儀なくされていた
――よすがとした、日本時代の引き出し
登板回避決定から僅か4日のうちに施したフォームの改良。そこへの不安はなかったのか――。
菊池は淀みなく言葉を継いだ。
「2年前に、一時期日本で2段が(モーションが)駄目ってなったときに、やめざるを得なくなって。その時にああいう(フォームで)ピッチングをしてました。なので、特別に違和感はないです」
西武時代の2017年、菊池はシーズン途中に2段モーション(翌年にルール改正で解禁)を指摘されフォーム修正を余儀なくされている。その時に腐心の末に編み出した右足の運びを今回の上体の突っ込み抑制に当てはめたのだった。
――今季一番の好投があだとなる皮肉
登板回避につながった2試合連続のノックアウト。先述のトラウトの打席で顕在化した“腕投げ”だが、フォームを崩した一因には「僕がメジャーで生き残るための自信を深めた試合」と言い放った5月19日のツインズ戦での好投があったと菊池は分析している。
その日、菊池は本拠地シアトルのマウンドで躍動。速球に滅法強く波に乗るツ軍相手に最速96マイル(約154キロ)の直球を主体に挑み、6回を5安打3失点で本拠地初白星を挙げた。しかし、この試合で得た自信がフォームの歯車を微妙に狂わせた。
菊池はその結ぼれをほぐすように振り返った。
「いい時の感覚を意識し過ぎると、いろんなところに力みが出たりバランスやタイミングがちょっとずつズレる。しばらく『いいな、いいな』と思って同じことをやっているつもりでも、1年間やっていくうちには必ずこういう時期は何度かある。ピッチングはそういう繰り返しだと思います」
疲労を心配する周囲の視線を斥ける手堅い説明に、菊池の現在地が見えた。
日本時代に作った引き出しを開け、崩れ出したフォームのバランスを取り戻した菊池雄星。大谷とのメジャー初対決も期待される8日の試合で、本来の投球を見せることはできるだろうか。マウンドの土を力強く蹴る準備を整えた左腕は歯切れよく言った。
「早く投げたい。いいピッチングをしたいと思います」
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)