テーピングでパフォーマンスが向上? 元プロ野球トレーナーが新境地を開く
ケアから広がる可能性、奥が深いテーピングの世界
今回実験を監修した若松氏は、桜美林大学で講師としてスポーツ医学、解剖学、スポーツコンディショニングなどを担当し、2009年には楽天で臨時トレーナーを務めた。若松氏を「平等なスタンスの先生」と称する永井氏は、同じく楽天でリハビリコーディネーター、コンディショニングコーチ、通訳を兼任し、MLBのサンフランシスコ・ジャイアンツ3Aフレズノ・グリズリーズで学んだ。
輝かしい経歴の持ち主ながら、気さくでエネルギッシュな両名により、実験は終始和やかな雰囲気で進行。息の合った掛け合いも見せてくれた2人に話を聞いた。
――そもそもテーピングといえば、ケガの治療や予防というイメージが強い。
永井氏「基本的に、テーピングとはケガをした人に対してのサポートが多いです。例えば、損傷した靭帯は修復しないので、壊れてしまったところはゆるいままですが、テーピングという補強をすることで(新しい)ケガが防げます。それが予防の観点です」
若松氏「昔と今では大きく違います。かつてはキネシオロジーテープがなく、伸縮性のない“ホワイトテープ”を使っていました。ケガをした後に、足首なら内反(捻挫)をしないように巻きます。しかし、ケガをしても(試合に)出なければならない選手もいます。ホワイトテープで固定すると動けなくなってしまう。それで、最低限、悪化させないようにしつつも(試合で)動けるようにという巻き方をするようになりました。筋肉を補助したり(状態が)良くなってきたときに動けるようにしたりと、だんだん進化しています」
永井氏「パフォーマンスを向上させるための補助的な要素が増していると思います。伸縮性のないホワイトテープも、例えば足首に巻いたら固定感によって安定性が出るので、痛みを軽減させるような効果が見られます」
――今回の実験で、テーピングのさらなる可能性を模索している?
永井氏「はい。パフォーマンスの向上のためにテーピングを使ったのは今回の検証が初めてです。ケガをしていなければ必要とされないし、できるなら貼らない方が良いと考えられているものに、もしかしたら可能性として生きるものがあるかもしれない。ただ、同じ商品が販売され続けるわけではない。少しずつマイナーチェンジするし、全国のトレーナーが同じメーカーを使っているわけではないので、検証し続けるのもなかなか難しいのですが」