テーピングでパフォーマンスが向上? 元プロ野球トレーナーが新境地を開く

テーピングにはさらなる可能性が…
テーピングにはさらなる可能性が…

「新しいことをやるうえで、間違いなんてない」という考え方

――今回の実験で、テーピングを施したピッチャーとバッター4人全員に、パフォーマンスの向上が見られました。その中で、一番驚いたことは?

永井氏「僕はテーピングでスイングを促してあげた方が、いける(スイングスピードが出る)と思っていました。でも、(動きを)固定されたことでスピードが出る選手もいましたね。固定感がある方が、自分の中で動きが出しやすいのでしょうか。逆の発想でした」

――固定すると、可動範囲が狭くなるのではないかと思いますが。

永井氏「逆の方向に(身体を)持っていかれている方が、思い切って力が出しやすいのではないかと思います。ただ、それも人によって違っていて、促されて力が増す選手もいれば、固定された方が良い選手もいます。ピッチングもそうですね」

若松氏「ひとりぐらい、結果が変わらない人もいると思っていましたが(笑)」

永井氏「気持ち(の持ちよう)がプラスに働いたという面は、もちろんあると思いますよ。テーピングを貼ると安心できるし、気分的にはすごく楽。人間は(注意を払うべき部位に)触れられていると意識が入りやすいので、貼っているだけでパフォーマンスが上がることはある。そういったところの影響は、忘れないようにしてほしいですね」

若松氏「動画の中でも“プラシーボ効果もあります”と言いましたが、本当に大事な一言なんです」

永井氏「実は、今回の検証は、あまりロジックにならないようにしているんです。世の中でやっていることは理論で固める習性があるので、例えば“若松先生“と“永井トレーナー”(という専門家が2人揃っている)となると、もうガチガチに固めてやらないといけないような雰囲気になってしまうでしょう。でも、もっと柔らかく、“こういうことをやってみたいよね”というところから始まった方が、いいんじゃないかなと思いますよ」

若松氏「現場はやっぱり(理論を組み立てることとは)違うでしょう。実際に使ってみて、わかることがあります。感覚もありますし、ペーパーだけがすべてではありません」

永井氏「新しいことをやるうえで、間違いなんてなにもないんです。そもそも新しいことをやっているのだから、何もわからないじゃないですか。だから、今回のようなことをやっていって、同じ感覚の人が集まってきたら面白いんじゃないですかね。やっていきたいですね」

 今回の実験では、監修した若松氏と永井氏の予想を上回るほどの結果が出た。その中でも、ふたりの “やってみよう”という熱い姿勢は印象的だった。見たことのないものが生まれるのは、いつでもこのような一歩からなのかもしれない。

「球速・ボールの回転数」を比較する実験に参加したジャンクベースボールクラブのバッテリー【写真:馬塲呉葉】
「球速・ボールの回転数」を比較する実験に参加したジャンクベースボールクラブのバッテリー【写真:馬塲呉葉】

・若松健太(わかまつけんた)
桜美林大学健康福祉学群専任講師。ジャンクベースボールクラブ監督兼代表。一般社団法人ジャンク野球団理事。2009~12年まで、日本体育大学体育学部助教。2009年の楽天の沖縄久米島キャンプで、一般応募から臨時トレーナーを務める。2007年にジャンクベースボールクラブを発足。2018年に引退した楽天の元盗塁王・聖澤諒氏とは公私共に親しい間柄。

・永井裕樹(ながいひろき)
株式会社T-MARC代表取締役。ジャンクベースボールクラブトレーナー。MLBサンフランシスコ・ジャイアンツ3Aフレズノ・グリズリーズで研修後、2010~14年まで、楽天でリハビリコーディネーター、コンディショニングコーチ兼通訳を務める。山梨学院大にて講師をしながら、水泳の鈴木聡美をはじめ。様々なスポーツの日本代表クラスの選手だけでなく、子どもたちへの運動指導にあたっている。

・ジャンクベースボールクラブ
2007年に発足した草野球チーム。野球を通じ「人生を豊かにする」ことを目的とする。2011年、13年、14年、16年に関東草野球リーグ1部で優勝し、第42回サンスポ野球大会の東日本大会で準優勝。2018年9月、「一般社団法人ジャンク野球団」を設立し、野球啓蒙活動も実施している。

・商品提供:ピップ(株)http://bit.ly/2ZqzSSb

(「パ・リーグ インサイト」馬塲呉葉)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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