中日ファン囁く“ホームランテラス待望論” 賛否を実際に選手、監督に聞いてみた
投手、捕手は反対派が多数、大島は中立派
具体案を持ち出した上、投手への思いを語ったのが堂上直倫だ。
「ウォーニングゾーンのラインまでフェンスを前に出して、高さも今の半分。ホームランキャッチができるギリギリの高さがいいと思います。日本ではピッチャーはクオリティースタートや防御率より、まだ勝ち星で評価される。それなら、一発で逆転がある方が良いのかなと」
投手の評価については山井大介も触れた。
「もし、テラスを作るのなら、クオリティースタートの基準など年俸の査定も変えないと。防御率は悪くなりますよ。僕は反対。1点を守り抜くのも野球の楽しみじゃないですか」
中継ぎの祖父江大輔も難色を示す。
「僕たちは1球で勝負が決まる。打ち取った当たりがホームランになるのは厳しいですね」
投手では珍しく、福敬登が賛成だった。
「ファンが喜ぶでしょう。確かに不利ですが、低めに投げる、腕を振って強い球を投げる意識は変わりません。要するに球場が狭くても、やるべきことは同じだと思います」
大島洋平は中立派。
「バッターは有難いけど、ピッチャーは辛い。結局、プラスマイナスゼロというか、正直、どちらでもいいです。要は慣れの問題。僕たちは球場にアジャストすることが一番大事。ただ、狭くなると、守備は楽でしょうね。右中間や左中間を追う必要がなくなりますから」
野手で反対したのは捕手陣だった。木下拓哉は言う。
「ホームランを打てる期待感より失点に繋がる警戒心の方が勝りますね。やはり打ち取った打球が入るのは嫌ですね」
武山真吾は配球の心構えを語った。
「僕は大反対。ただ、仮にテラスができても、ホームランを恐れて配球を変えるはダメ。外の低めの変化球に偏ると、ボール球が増え、球数が増え、失投のリスクが増える。回転のほどけた甘い変化球ほど飛ぶボールはない。結局、ホームランも増えるんです」
まとめると、投手と捕手が反対、野手が賛成。これが概ね結論だ。改めて、思う。現役選手はチームの勝利を強く望んでいるが、それと同じくらい自分自身の生活を必死に考えていると。
最後に与田剛監督を直撃した。
「難しい。一概にどちらが良いとは言えない」
慎重だった。ただ、指揮官は「いかなる状況でも前を向いて戦う姿勢」を求めた。
「世の中は常に現実が1つ、考え方が2つ。ネガティブ、ポジティブ、どちらに捉えるか。仮にテラスを作るとなると、投手陣には『よし!それならホームランを打たれないように抑えてやる』という気概を持って欲しい。逆に今のままなら、野手陣には『何とかもうひと伸びする打球を打ってやる』と思って欲しいね」
さぁ、後半戦が始まる。とりあえず、今シーズン中にナゴヤドームにホームランテラスができることはない。この現実をどう捉え、どう戦うのか。竜戦士のプレーに注目したい。
(CBCアナウンサー 若狭敬一/ Keiichi Wakasa)
<プロフィール>
1975年9月1日岡山県倉敷市生まれ。1998年3月、名古屋大学経済学部卒業。同年4月、中部日本放送株式会社(現・株式会社CBCテレビ)にアナウンサーとして入社。テレビの情報番組の司会やレポーターを担当。また、ラジオの音楽番組のパーソナリティーとして1500組のアーティストにインタビュー。2004年、JNN系アノンシスト賞ラジオフリートーク部門優秀賞。2005年、2015年、同テレビフリートーク部門優秀賞受賞。2006年からはプロ野球の実況中継を担当。現在の担当番組は、テレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜12時54分~)「High FIVE!!」(毎週土曜17時00分~)、ラジオ「若狭敬一のスポ音」(毎週土曜12時20分~)「ドラ魂キング」(毎週金曜16時~)など。著書「サンドラのドラゴンズ論」(中日新聞社)。