元鷹・攝津正氏が語るホークスが常勝軍団である理由「競争意識がすごく強い」

現役時代、ソフトバンクで活躍した攝津正氏【写真:藤浦一都】
現役時代、ソフトバンクで活躍した攝津正氏【写真:藤浦一都】

「FAで選手を獲ってるんですけど、でも、そういうわけではない」と補強によるものではないと指摘

 2011年以降で5度の日本一を誇るなど球界を牽引するソフトバンク。2000年代後半から常勝軍団へと上り詰めたチームの中心を担ったのが、2008年にドラフト5位で入団した攝津正氏だ。昨季限りで現役を引退するまで、通算282試合登板(140先発)で79勝49敗1セーブ73ホールド、防御率2.98をマーク。入団から2年連続で最優秀中継ぎ投手に輝き、先発転向後の2012年には沢村賞も受賞した。

 秋山幸二前監督が就任した2009年からソフトバンクでプレーし在籍した10年間で5度のリーグ優勝、5度の日本一を経験した。ソフトバンクが球界を代表する常勝軍団へと駆け上がった10年を見てきた攝津氏が感じるホークスの強さの要因はどこにあるのか。Full-Countのインタビューに応じ、語ってくれた。

 攝津氏は愛着あるソフトバンクの強さの要因について「やっぱり環境じゃないですかね」と明かす。

「最近少し薄れてきたんですけど、競争意識というのはすごく強いですよね。今、ホークスにベテラン選手が足りないと聞くこともあるんですけど、競争心というはまだありますからね。怪我をしたら他の選手がすぐに出てきて試合に出られなくなるという、そういう状況はチーム力が上がってる要因なのかなと思いますよね」

 攝津氏の言葉通り、今季も柳田や中村晃といった主力に怪我人が続出しながら、新戦力の台頭でその危機を乗り越えた。戦力編成は整わないまま、現在、パ・リーグ首位。浮き沈みこそありながらも、2年ぶりのリーグ優勝に突き進んでいる。

 入団当時、チームは下位に沈むこともあった。だが、攝津氏はセットアッパー、そして、エースとして常勝軍団へと変貌を遂げる過程を中から見てきた。よく言われる“育成力”もまたソフトバンクの大きな強みだと見ている。

「いきなり強くなったというより、徐々にチーム力が上がっていって強くなったというのをすごく感じます。FAで選手を確かに獲ってるんですけど、でもそういうわけではないと思うんですよね。若いピッチャーもすごく出てきましたし。たくさん(若手)選手がいるというのもあるんですけど、3軍制度でじっくり環境を積ませながらできるというのがいいのかなと思いますね。2軍にいても試合に出られない選手って出てくると思うので、その分、3軍で試合数をこなせる。選手もじっくり焦らずに育つことができる」

 そして、高い能力を持った選手たちがしっかりと力を伸ばし、主力へと成長していく。「みんな光るものがあるし、いいものがあるんですけど、やっぱり出てくる選手って、自分で考えて出てくるんですよね。コーチに何か教えてもらったら、それを自分で噛み砕いて練習をたくさんやるので」。育成契約から日本球界を代表する投手へと成長を遂げた千賀滉大投手は、まさにそれを体現する選手だという。ただ、それもソフトバンクという球団だったからこそ。

「(千賀は)やっぱり自分の世界があって、必要なものは取り入れる。そういう風に上の人間がやっているから、そういうことを見ているから、できるんじゃないかなと思いますね」

 かつて監督を務めた王貞治球団会長から秋山幸二元監督、工藤公康現監督、そして城島健司氏や松中信彦氏、斉藤和巳氏といった偉大な先輩から後輩へと脈々と受け継がれてきた伝統。それを攝津氏らが引き継ぎ、そして、千賀ら今の若い世代へと繋いでいっている。そうした伝統、選手としての心構えもまた、ホークスの強みなのだろう。

(Full-Count編集部)

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