元DeNA荒波翔が独白 メキシコ挑戦で芽生えた思い「海外での経験がセカンドキャリアに」
メキシコ国土は日本の約5倍、バスで8時間の移動も経験…
今季メキシカンリーグでプレーした元DeNAの荒波翔外野手。残念ながら6月25日に契約解除されてしまったが、所属したスルタネス・デ・モンテレイでは約3か月プレーした。昨年までDeNAで8年間プレーしたが戦力外通告を受けた後に自由契約となり、今季海外初挑戦。メキシカンリーグの強豪チームで主に「1番・センター」として47試合に出場し、打率.293、12打点、0本塁打、7盗塁、46得点の成績を残した。そんな荒波が「Full-Count」の独占インタビューに応じ、同リーグの実態や、打者目線で見たメキシコと日本の野球の違いなど、メキシコで感じたことを語ってくれた。
――メキシカンリーグは打高投低と言われています。
「もちろん標高の問題もあると思いますが、コントロールのいい投手が少ないことも理由の一つだと思います。センターから見ていても、追い込んだ後、捕手が構えたところに投げられず、真ん中とか振れるコースにボールがいってしまう。コースいっぱいに来るボールは日本よりも少ないですし、打つことに関しては、メキシコでは打者のレベルも高いので、1試合で10安打、20安打という試合を何度も経験しましたね」
――メキシコでプレーして驚いたことは?
「投手が投げる直前、足を上げるまで、球場ではずっと大音量で音楽が鳴っているので、最初は集中するのが大変でした。投手もやりづらいんじゃないかなと思います。あとは移動が大変でした。メキシコの国土面積は日本の約5倍。広い国なんですよ。なので、バスで8時間の移動もありましたし、他の地域と2時間の時差があるティファナで試合があった時は、その後の移動で睡眠時間が十分に確保できませんでした。最終日の試合後、ホテルに戻ったのが深夜1時。その3時間後の翌朝4時にホテルを出発し、朝の飛行機に乗ってモンテレイに戻り、そこからさらにバスで3時間の移動。
次のホテルに到着したのは午後3時で寝る時間がなく、眠気があるまま夜の試合にそのまま出場しました。あれが一番辛かったですね。米国のマイナーリーグや独立リーグも移動が大変だと聞きますが、メキシコもなかなかです。しかし、これも日本では経験できないこと。精神的にも強くなれましたね。あと、メキシコはダブルヘッダーの時は2試合とも7回までなんです。逆に、延長戦になると勝負がつくまでエンドレスだというのも知らず、最初は驚きました」
――観客数はどうでしたか?
「モンテレイは立派なスタジアムで球場も大きいのですが、観客は入って6000人くらいでした。日本みたいにスタジアムが満員にならないので、興行としてもっと改善の余地があるだろうなと思っていました。メキシコは貧富の差が激しいので、野球好きでもみんなが試合を観に来られるわけではないと思いますが、観客が増えれば選手もモチベーションになりますし、球団も潤って相乗効果もある。ファンサービスも、日本ほど積極的ではないんですよね。例えば、ユニホームを無料で配ってスタンドを満員にするような努力を日本はしているじゃないですか。メキシコでもこういったファンを増やすような努力をすればいいのになと思っていました」
――メキシコのファンの印象は?
「日本のように満員の球場で鳴り物の応援をしてくれるのも嬉しいですが、メキシコはとにかくフレンドリー。試合中にお菓子をくれたり、写真を一緒に撮ってほしいと言われるんです。日本ではありえないことにもメキシコの選手は当たり前のように対応していて驚きました。こんな風に選手とファンの距離が近かったですね」
――日本でプレーしていたチームメートが多くいました。
「ラミロ・ペーニャ(元広島)、フェリックス・ペレス(元楽天)、アグスティン・ムリーリョ(元楽天)、ヤディル・ドレイク(元日本ハム)、ヤマイコ・ナバーロ(元ロッテ)、ウィルフィン・オビスポ(元巨人、日本ハム)、ホゼ・デ・ポーラ(元石川)の7人です。みんな日本語でコンニチワ、アリガトウって言ってくれていました。ペレスは打撃練習を始める時に日本語で『バッティングいきま~す』って言ってましたよ。みんな壁がなくて優しい。彼らのおかげでやりやすい環境でした」