給与未払い、偽札、治安…元DeNA久保康友が明かす“波乱万丈”だったメキシコ生活

監督(右)、投手コーチ(中央)から勝利を祝福される久保康友【写真:球団提供】
監督(右)、投手コーチ(中央)から勝利を祝福される久保康友【写真:球団提供】

今季からプレーしたメキシコは「契約事項すら守らない国」、生活では衝撃的な出来事が続々…

 メキシカンリーグのブラボス・デ・レオンで今シーズン初めてプレーした元DeNAの久保康友投手。開幕投手を務め、チームのエースとしてフル回転した右腕は、26試合に登板して8勝14敗、防御率5.98。いずれもリーグトップの152投球回、154奪三振をマークした。

 初めてのメキシコでの生活では、予想を上回る“アクシデント”が続出。チームの組織がしっかりしておらず、通訳の給料に偽札が入っていたという衝撃的な出来事も。ベテラン右腕がメキシコで経験したこととは……。シーズンを振り返るインタビューの最終回は【生活編】。

――メキシコでの生活はどうでしたか?

「去年、米国の独立リーグでプレーしていた時に、いろんな選手から『メキシコは適当な国だからやめとけ』って言われたんです。日本人と比べて適当なアメリカ人ですら行きたがらないリーグって、いったいどんなところなんだろうと興味を持った。いろいろ驚くことがあるだろうなとは思っていましたが、予想を上回るような出来事が毎日起きました。メキシコは契約事項すら守らない国なんだと思いました」

――例えば?

「契約では、チームが用意した住居に住むことになっていたんですが、チームが家を用意してくれず、自分で部屋を探しました。開幕前には入居できるという話だったんですが、手続きを一向に進めてくれず、入居できたのは開幕から2週間後。しかも、いつまでたっても契約に必要な書類を用意してくれず、家賃の支払いも期日までに行われないことばかりで、マンションのエレベーターに乗るためのセキュリティカードの使用を2度止められました。チームが必要書類を用意しないため、居住証明を出してもらえず、免許証の切り替えもできませんでした。休日にレンタカーでドライブに行きたかったんですが、それも実現できませんでした。

 労働ビザも、メキシカンリーグの選手はチームがビザを申請中であれば、取得前でもプレーできるそうなんですが、チームは結局申請をしただけで、何度頼んでもビザを取りに行かせてくれない。メキシコでは外国人は常に身分証の携帯を義務づけられているのですが、ビザがなく、居住カードがもらえなかったため、常にパスポートを持ち歩く生活でした。うちのチームの外国人選手は誰1人、ビザを取得していません」

――オーナー会社が変わったばかりだった影響なのでしょうか?

「それもあると思います。ほかのチームの選手は開幕前やシーズン中にビザを取得していますし、お金のあるチームは環境もいい。例えば、メキシコシティのディアブロスにいた横山くん(元楽天の横山貴明投手、現BCリーグ福島)は『もっといろいろ大変だと思っていたけど、来てみたらチームの環境が日本と変わらない(くらいいい)ことにビックリした』と話していましたし、他のチームの選手は開幕前やシーズン中にビザを取得している。GMによって、こうも違いがあるんだなと……。

 細かい精算とかも、チームにお金はあるはずなのに、払う払うと言いながら、実際は面倒くさがって逃げて払ってくれなかったし、行ったチームが悪かったなと思いました。創設されて1年目のチームやオーナー会社が変わって1年目のチームは組織がしっかりしていないから行かないほうがいいよ、と後になって球界関係者の方から助言を受けましたが、まさにうちのチームがそれでした。

 マンションもそうで、新築だから見た目はしっかりしていましたが、シャワーに適温がなく、熱いか水か。キッチンの換気扇も音がうるさく、エアコンは3台とも水漏れ。工事を頼んでも約束の時間よりも遅れてくるし、来ないこともある。1台は直してもらったら今度は逆側から水漏れが始まりました。全然直らないから工事の人、計7回くらい来ましたよ。マンションもチームと同じで、1年目のところは部屋の内部が整備されていないからやめておけと帰国直前に現地在住の日本人の方に言われましたが、本当にそうだなと思いました」

「僕の通訳に手渡された給料には、偽札が含まれていたこともありました」

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