最終S打率.143と徹底的に封じられた森友哉 鷹・甲斐が初戦第1打席で仕掛けた“罠”

初戦の第1打席、甲斐は和田に対して4球連続でインコースを要求した

 初球は140キロの真っ直ぐ。外角に外れたものの、甲斐の構えはインコースだった。1ボールとなって投じた2球目も構えは再びインコース。森の顔付近を通過する厳しい真っ直ぐが外れてボールとなった。3球目もインコース。やや真ん中低めにきて、これはファウルに。そして、4球目。再び内角への真っ直ぐを要求し、森は腕を畳みながら、中前へと弾き返した。

「和田さんの投球で意識付けできた」。この第1打席、和田と甲斐のバッテリーは4球連続で森の内角を攻めた。パ・リーグ首位打者で卓越したバットコントロールを誇る森の脳裏に、インコースを徹底的に染み込ませるように仕向けた。続く第2打席。1死一、二塁で迎えると、1ボール1ストライクからバッテリーは外角へのスライダーを選択。森は体が開き気味になりながら、当てるだけのバッティングになり二ゴロに倒れた。またインコースに来るのでは、との意識が窺える打ち取られ方だった。

 5回の第3打席では、変則左腕の嘉弥真がマウンドに上がっていた。嘉弥真は大きなスライダーを武器とするが、ここでも甲斐は初球、2球目とインコースにストレートを要求した。1ボール2ストライクからの4球目、外角のスライダーを森は手だけで懸命にファウルにした。スイングは明らかに崩されていた。5球目も外角のスライダー。これはスイングが止まりボールとなったが、2ボール2ストライクからの6球目、再びアウトコースのスライダーに森のバットはあえなく空を斬った。

 レギュラーシーズンで打率.329をマークした森。この日の第1打席での安打以降、4試合で森が放った安打は第2戦の7回の中前安打だけ。一発はもちろん、長打を許さなかった。第3戦の千賀は森のインコースに次々にカットボールを投げ込み、まともにスイングさせなかった。本来の思い切りのいいスイングをする森の姿は、この4試合、ほとんど見ることはできなかった。

 甲斐は「森はバットコントロールがいいですし、シーズン中にやられていたので」と言う。その技術で外角のボールでも安打にしてしまう森。そんな好打者に対して、いかにしっかりとしたスイングをさせないか。スイングを崩せさえすれば…。そう甲斐は踏んでいたのではないか。

「こっちから仕掛けていかないといけない。CS前にも和田さんと話して僕の気持ちを伝えて。和田さんからも『そう思う』言っていただいた」。甲斐はこう振り返る。第1戦の初回にあった“和田の4球”。これがクライマックスシリーズ ファイナルステージの勝敗を分ける1つのキッカケだった。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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