球団消滅から15年― 豪快伝説、個性派集団、いてまえ打線…最後の選手会長が語る近鉄
「この本によって、まだまだ近鉄で繋がることができると思います」
奈良県に、「B-CRAZY」という居酒屋がある。店主の浅川悟氏は球団消滅から15年が経った今も近鉄を愛し続ける生粋のファンで、今回の書籍でインタビューを受けた人物の一人でもある。店には多くの近鉄グッズが展示され、近鉄OBを招いたイベントも度々開催。礒部氏も、実際にこの店を訪れたことがあるという。
「別件で足を運んだ際に“近鉄難民”という言葉を使わせていただいたのですが、どこを応援したらいいかわからなかったり、近鉄がなくなってどこか気が抜けてしまったりと、僕たち以上に苦労しているファンの方々もいます。このような本を出したことによって、昔の話をしたり、ファンの方と一緒になって、イベントの中でいろいろな話をしながら楽しんでいければと思います」
通算4度日本シリーズに臨みながら一度も日本一に輝くことなく消滅した、「記録よりも、記憶に残るチーム」だった近鉄。最後に、礒部氏は当時から現在まで近鉄を応援し続けているファンの方々や、この本を手に取ってくれる人々に対して、メッセージを贈ってくれた。
「もう近鉄というチームはないですが、この本によってまだまだ近鉄でつながることができると思います。そのつながりは僕も一生続けていきたいですし、ファンの方とのふれ合いや、固い繋がりができればいいなと。いいメンバーに話を聞いて、元永さんと集英社さんにまとめていただき、僕たちとしても本当に感動できる良い本になったので、ぜひ購入していただきたいなと思っています」
かつてパ・リーグには、その豪快な野球で人々を魅了した、近鉄バファローズというプロ野球チームがあった。西本氏から続く近鉄の伝統を引き継いだ礒部氏たちが、またその次の世代へと「近鉄」という存在をつないでいく。たとえ球団がなくなったとしても、近鉄を愛し、後世にその輝きを伝えたいと願う者がいる限り、「記憶」という名のバトンは、きっと受け継がれ続けていくことだろう。
インタビューの最後に、55年の歴史を持つ近鉄の歴代ベストナインについて礒部氏に聞いた。投手(野茂英雄氏)、三塁手(中村紀洋氏)、監督(西本幸雄氏)の3ポジションはほぼ即決。とりわけ頭を悩ませていたのが遊撃手のポジションで、当初はキャリア序盤に強打のショートとして活躍した村上隆行氏の名前を挙げながら、最終的には同じく若手時代に遊撃手としてプレーしていた水口栄二氏を選出している。
一塁手としては礒部氏と同じ1997年に入団して主砲として活躍し、イチロー氏と首位打者争いも演じたフィル・クラーク氏を「僕が見た中では一番」と高く評価したが、1994年の打点王にも輝いた石井浩郎氏を選出。外野は礒部氏本人が「僕は別に入らなくてもいいと思いますけどね」と語るほど層が厚く、主力として安打を量産した3選手が名を連ねた。
礒部氏が選ぶ、近鉄バファローズの歴代ベストナインは以下の通りだ。
投手:野茂英雄氏
捕手:梨田昌孝氏
一塁手:石井浩郎氏
二塁手:大石大二郎氏
三塁手:中村紀洋氏
遊撃手:水口栄二氏
左翼手:タフィー・ローズ氏
中堅手:大村直之氏
右翼手:新井宏昌氏
指名打者:ラルフ・ブライアント氏
監督:西本幸雄氏
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)