DeNAドキュメンタリー映像制作の舞台裏 撮影監督が400時間の映像に込めた想い

移籍組も驚く、負けても変わらないチームのモチベーション

 前日がどんな結果であってもチームのモチベーションが変わらないのは、ベイスターズならではのことかもしれない。辻本監督によれば、昨季オリックスから移籍してきた伊藤光、阪神から移籍してきた大和ら、他のチームを経験した選手は、10連敗した時のチームの雰囲気を振り返って「あの状況であの雰囲気はありえなかった」という話をしていたという。

 これまで様々なドキュメンタリーやインタビュー映像の制作に携わってきたが、プロ野球チームに密着するのは初めての機会だったという辻本監督。昨年から2シーズンにわたり、チームの瞬間瞬間をカメラに収め続ける中で、何よりも驚かされたのは常にチームについて考え続けるキャプテン、筒香の姿だった。

「筒香選手のようなキャプテンはまったくイメージしていなかったです。すごい偏見ですけど、僕の中で考えていたキャプテンは、人前で話ができるとか、積極的に発言ができるとか、凝り固まったイメージを持っていました。でも、筒香選手がチームのために行動する姿を見て『ここまで考えているんだ。ここまでチームに対して思い入れがあるんだ』というのを目の当たりにして驚きました」

 作品の中では、キャプテンとしてチームを少しでも盛り上げたいと工夫を凝らす筒香の姿が描かれている。自身が負傷した時でも、常にチームにとって何が大切かを考える姿は、28歳という実年齢以上の懐の深さを感じさせるものだ。筒香がキャプテンに就任したのは、2015年シーズン。まだ24歳の時だった。

「僕はカメラを回し始めて、たった2年目。筒香選手が作り上げようとしてきたチームが、きっと出来上がっている状態だったと思うんです。実際に球団の方に聞いてみると、キャプテンになって1年目はみんな年上で、当時選手会長だった下園(辰哉)さんが横に立って様子を見ていたり、シーズンが終わった後に後藤(武敏)さんから『もっと自分を出していいよ』と声を掛けられたこともあるそうです」

 筒香は2015年オフにドミニカ共和国でウインターリーグに参加。そこでいろいろな野球との向き合い方や楽しみ方を学んだ様子で、キャプテンとして迎えた2年目、2016年シーズンから明るいチームにしようと音楽を流したり、ホームゲームで初回の守備に就く時に大きな掛け声を出したり。チーム関係者は「本当はそういうタイプではないけれど、チームのためになるならばと自分自身を鼓舞して役割を全うしていたんでしょうね。当時、『本当は静かに野球していたいですよ』と試合後のロッカールームで呟いた声が今も心に残っています」と話す。

筒香が残したもの、残された選手が感じたもの 辻本監督「来年も大丈夫だな」

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