10度の手術、縫合は191針に… 元燕・館山が語る「人体実験」から得た気付きと経験と
先輩のヤクルト・五十嵐亮太も興味深々「どうだったか、教えて!」
――他に確認できたものはありましたか?
「関節包と言われる関節の袋がどんどん固くなっていくので、それもとってしまおうと。たぶん、歳が行けば行くほど、ピッチャーは関節の袋が堅くなってくるんです。それを全てとってしまっても、どこまで投げられるか試したいというのもあったんです。それは五十嵐(亮太)さんから『俺も可動域が悪いから、関節包、固くなってるし、やってみて、どうだったか教えて』と言われたので『はい、わかりました』って。(笑)今度経過報告します」
――怪我で苦しんだ現役生活を“失敗の歴史”と表現されていましたが、決してそんなことはないのでは?
「いつか、10度の手術の経験が何かの役に立つかも知れないと思うんです。肩を縫う手術はしてないですけど、股関節、肩、ひじ、関節唇、形成手術、トミー・ジョン、血行障害、神経脱臼、広背筋の神経圧迫を開いてみたり……いっぱいあってしょうがないけど、間違いなくリハビリは確立されていて、戻ってくることができると大きな声で言いたいですね。自分が身をもって体験したことなので。どんな手術でも、今まで自分が経験した手術に関しては全てクリアになっている。ちゃんとパフォーマンスも出せますし、一球一球取れば、最後の年も150キロ出るし、アウトもちゃんと取れますし」
――プロ野球選手だけではなく、子どもたちにも怪我は怖いことではないというメッセージも伝えることができますね。
「怪我を恐れてしまってもダメだけど、もう絶対にプレーができなくなるとか、怪我って駄目なものなんだ、っていうものでもない。きちんとドクターの話を聞いて、手順を踏めば、必ず戻ることができます。どの好きなスポーツでも、自分のやりたいことでも、怪我であきらめてほしくないですし、とことんやり切って欲しい」
――怪我で野球をやめてしまう人も多いと聞きます。
「よく『野球が上手かったけど、怪我で辞めちゃったんだよね』っていう人っているじゃないですか。僕の考えでは、怪我では辞めないですから。怪我に負けることはないんです。それは自分にとっての言い訳に聞こえてしまうんです。“怪我で諦めた”“怪我で肘がどうだったらから諦めた”……。もちろん、それにはタイミングもありますし、自分の限界をどこで感じたかわからないですが、『突き詰めたけど、力がなかったんだよ』って言ってほしいですし、自分ではそう言いたいです。やっぱり、やり抜いてほしい、好きであるのであれば続けてほしいし、その先にすごく素晴らしい世界が待っているから。怪我でマイナスイメージで終わってしまうと嫌いになってしまう。辛かった思い出も全て素晴らしい経験に変わるときが来るんですよね」
――手術で縫った針は合計、何針になりましたか?
「191(針)です。表に見えているだけで。今回が16針。でも、それ以外に骨にアンカーで5本くらい糸打っているし、中を閉めるときにそこも縫っているし、それを入れたらもう(もっとすごい数)。表面上、何針というのは面白いから言っていますけど。腕の中はもっとすごいことになってます」
――今後、この経験をどのように活かしていきますか?
「今は、自分の失敗の歴史というものや、失敗談をたくさん喋れています。でも、やっぱり怪我をしないことの方が重要で、そこに持っていけたら、つなげることができればと思います。そのためにも自分が、今でも身体ってどうなっていて、どういうトレーニングができればいいのかと考えて、今もまだまだトレーニングしているし、ようやくオフシーズンに入って自分の身体と向き合う時間も少しできてきました」