いったいなぜ… 日韓の争奪戦で韓国球界を選択する外国人選手の理由を分析

PCLでプレー後にアジアに渡った投手の成績【画像提供:DELTA】
PCLでプレー後にアジアに渡った投手の成績【画像提供:DELTA】

KBOはNPBに比べ先発の機会を得やすい?

 ではどうしてアジアの中でもNPBではなく、KBOを選ぶのだろうか。同じ環境からNPB、KBOに移籍した投手がどのような成績を残しているかを見ると、この理由が見えてくる。

 イラストは、AAAの打高投低リーグとして知られるPCL(パシフィック・コースト・リーグ)のあるシーズンに80イニング以上を投げた投手が、3年以内にNPB、あるいはKBOに移籍したケースを抽出し、それぞれどの程度の成績を残しているかを比較したものだ。ここでは2016年以降の移籍を対象としている。これにはNPB、KBOともに10投手ずつ該当した(※2)。

 まずこれら投手が初年度にどれほどの年俸だったか、中央値を比較すると、KBOの6600万円相当に対しNPBは7750万円(※3)。日韓でそれほど大きな年俸の差はないようだ。

 一方、移籍後の成績を見るとKBOとNPBの間に大きな差が生まれている。特に注目したいのが登板数や投球回だ。PCLで1094回1/3を投げた10投手がNPBでは664回1/3しか投げられていないのに対し、KBOでは1153回1/3を投げた10投手が1315回1/3も消化している。NPBでは実績のある先発投手をKBOほど起用できておらず、好成績を引き出せていないようだ。これは外国人選手保有枠が無制限なNPBでは、スペア的な役割や競争させる狙いで外国人投手を獲得することが多いためと考えられる。

 ただアジアでの経験をMLB復帰への足がかりとして考えている投手の場合、同程度の年俸であれば、NPBよりも先発として起用される機会が多いKBOに行きたいと考える投手がいても不思議ではない。もちろん球団のサポートなど福祉的な面もこの選択には関係しているだろうが、よりチャンスを得やすいという環境もKBOを選ぶ大きな理由だろう。

 KBOは2020年シーズンから1軍の試合に同時出場できる外国人選手が3人に増えるという。今オフは従来のような選手獲得傾向が続いているが、今後は野手2+投手1、あるいは投手2を先発1、抑え1と振り分けることも可能になる。その場合、現在はNPBの独壇場となっている救援外国人の市場にも風穴をあける存在にもなりうる。外国人投手獲得における日韓の激しい戦いはまだ始まったばかりである。

(※1)メジャーリーガーの年俸はSpotrac.comから引用。記事中はすべて1ドル110円換算で計算した。
(※2)PCL、IL(インターナショナル・リーグ)でそれぞれ80イニング以上を投げ日韓球界入りしたアンソニー・ラナウドとケーシー・ローレンスは今回対象外としている。
(※3)KBOの年俸データはKBO公式ホームページのデータを用いている。

(DELTA・水島仁)

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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