距離を置いたからこそ見えた阪神の姿 藤川球児が優勝にこだわるワケ「責務がある」

野球界でも求められるDIY「求められる人材や取り組み方自体には変化があってもいい」

 阪神に再加入した藤川は、以前よりも“ありのままの姿”を見せるようになったという。後輩を含むチームメートに対しても、ファンに対しても「きれい事だけじゃなくて、包み隠さずに全部、チャレンジする姿や勝負する姿を伝えています」。成功する姿だけではなく、つまずいたり転んだりする姿も含めて、自分自身だからだ。

「周りに成功していると思われている人ほど、しんどいんじゃないですか。明日も明後日も成功しなければいけないし、失敗したら、それをかき消すくらいの活躍が必要。少し傷が一度でもついたら、しばらくは信用を取り戻す期間になってしまうから。僕もそういう時期はありました。だけど、周りの意見や見方はなかなか変わらない。だから、今はとにかくブレずに、自分ができることをきっちりきっちりやるだけですね。いろいろ試した結果、自然体が一番いいんじゃないかって」

 こう考え始めたのはアメリカに行った後、ちょうど右肘靱帯を損傷し、長期離脱を余儀なくされた頃だ。それまで全速力で突っ走っていたスピードを緩めてみると、物の見方に変化が生まれた。

「周りの期待や求める結果に自分からへばりついていったり、こういう選択が普通だろう、ああいう選択をしなければいけない、という判断はしなくなりましたね。感じる期待に、ウソをつかずに向き合うことが大切。周りに合わせるのではなく、自分で判断できることが大切ですよね」

 自分で考え、行動する力を持っているか。野球界に限らず、今、世界で求められるのは「DIY(Do It Yourself)」ができる人材だ。

「野球でも会社でも、今は上の人が決めたメニューをこなす時代ではないでしょ。それを続けていたら、大きな人間的成長なんてありません。学校教育も自分たちで何かを創り出そうという方針に変わっている。世の中が変わっているんだから、野球界もシフトしていかないと。野球のルールは変わらないですけど、求められる人材や取り組み方自体には変化があってもいいんじゃないかと思います」

離れて見えた阪神の姿「ファンの方たちの気持ちがあって出来上がっている球団」

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