「野球離れ」への新たな取り組み―東京ヴェルディ・バンバータが追求する「スタイル」

東京ヴェルディ・バンバータU-15硬式チームの監督を務める小原慶治氏【写真:広尾晃】
東京ヴェルディ・バンバータU-15硬式チームの監督を務める小原慶治氏【写真:広尾晃】

「硬式は“野球中心の生活”、軟式は“生活の一部が野球”」

――球数制限についてはどう考えていますか?

「学童軟式野球・東京バンバータジュニアでは、これまでも独自に球数制限を実施してきました。最近はいろんな少年野球団体が球数制限を導入していますが、我々も定められたルールに沿い、独自に理論を構築しているところです。当初は、周囲の方々からいろんな声もいただきました。2日間の大会でエースを1日目に投げさせて、2日目に別の投手が登板して負けた時には、周囲の方々から『なんでうちの子を投げさせないで負けたんですか』と質問されましたが、『この試合(の勝利)よりあなたのお子さん(の健康)をとったんです』と説明しました。そこからそのような質問は減りました。練習時間も多くて4時間にしています」

――ユニホームは東京ヴェルディ・バンバータと同じデザインですね。

「子どもたちにも好評です。彼らも格好いいユニホームを着ているというプライドを持ってくれてるようです。それもいいことですね。髪型は自由です。逆に坊主にしたいという子は、『監督に相談してくれ』と言います(笑)。親の影響なのか、本人が希望しているのか。坊主頭が似合うというのならそれでもOKですが」

――試合や練習での方針は?

「グラウンドでは、よく少年野球で聞かれる声出しはしません。東京ヴェルディ・バンバータのように『いくぞ!』、『まかしとけ』みたいな普通の会話ができるチームがいいなと思っています。それから、アップ時に整列して走らせるようなこともしません。子どもはそれぞれ体格も歩幅も違うのに、並んで走る意味はありません。個人個人で自主的にアップができるようにするのが良いと思います。僕自身は最も厳しい野球を学んできました。それを知ったうえで、こういう指導をしようと思っています。

 保護者の中には『監督が育ったような指導をしてください』と言う人もいますが『本当にやったら潰れてしまいますよ』といっています(笑)。基本的に、硬式は“野球中心の生活”になりますが、軟式は“生活の一部が野球”と言う感じになるかとイメージしています。家族旅行や他のスポーツで練習を休むのも自由です。硬式野球部は8月から始まる新人戦に1年生で出場するのがデビューになると思います。軟式は、4月から体験練習を始めます。『中学の部活の軟式野球部と、東京ヴェルディ・バンバータU-15軟式野球クラブとどちらを選びますか』と言う感じです」

 近年、中学の軟式野球では、競技人口が激減している。その原因は1つではないが、昔ながらの日本野球のスタイルが大きいとされる。東京ヴェルディ・バンバータの取り組みは「野球離れ」に対する新たな取り組みとしても注目すべきだろう。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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