コロナ禍でも異国に留まる日本人 フィリーズ本間氏が語るドミニカの現状と思い
フィリーズのアカデミーに属するベネズエラ人57人は母国に帰国できず
そんな中、母国に帰国することができず、アカデミーに取り残されたのが、57人のベネズエラ人選手たちだった。ベネズエラは今回のコロナ禍を受け、3月14日からドミニカ共和国とパナマからの航空機の運航を停止した。また、米国もベネズエラの情勢悪化を鑑み、昨年5月から米国とベネズエラを結ぶ旅客機の運航をすべて停止するなど、他国もベネズエラ路線を以前から運休している状態だ。
3月16日からは国内で社会的集団隔離措置がとられ、多くの州で不要な外出が禁じられた。そして翌17日には他国からの旅客便も完全にストップ。ブラジルはベネズエラとの陸路の国境も部分閉鎖し、コロンビアもベネズエラとの国境を閉鎖。ベネズエラ国内では州を跨ぐ移動もできない状態で、ベネズエラ人の選手たちは母国に帰る術を完全に失った。米国に所在地があるマイナーチームのベネズエラ人の選手たちも米国のホテルで缶詰の状態だという。
本間氏もチームから日本に帰る選択肢を与えられたが、「この時期に長時間飛行機に乗るのは逆にリスクがある」と、ドミニカのアカデミーの寮に残ることを選択した。2012と2013年はパイレーツのアカデミーでドミニカでは日本人初のフルタイムスタッフとしてトレーナー業を務め、昨年からフィリーズで働く本間氏は、ドミニカでの勤務は今季で通算4季目。また冬も計11年に渡ってベネズエラのウインターリーグでトレーナーを務めており、ベネズエラにも愛着がある。そんなことも、ドミニカ残留を決断させた理由の1つだった。
今回の一斉帰宅を受け、フィリーズでは一部、近隣のホテル暮らしだったベネズエラ人選手たちを、空きが出た寮の部屋に移動させ、アカデミーの敷地内で選手たちを一括管理。最初の1週間は練習は行われていなかったが、チームの方針で3月下旬から練習を再開した。MLBから通達されたコロナ禍でのルールを守り、選手たちを8人以下のグループに分け、一緒に残っているベネズエラ人のコーチらが指導する形で、時間差で練習を行っているという。
「アカデミーの敷地内であれば、外部との接触もない。一緒に練習をしていいのは8人以内というMLBが定めたルールに基づき、チームの指示に従って練習をしています。アップ時から選手たちには2メートルの距離を保つように言っています。一番気をつけているのは、ケガ人が出ないようにすること。今は選手がケガをしても、我々スタッフは病院についていけない状況ですし、国内の医療もすでに崩壊している。この国は元々、救急車を呼んでも来る確率は10%なので、接触プレーやボールが当たってケガをしないよう、グラウンドを使うのもアップやノックだけ。紅白戦やシート打撃、フリー打撃、走者を置いての練習はしていません。打撃練習は室内ケージを使い、8人を2つのグループに分けて、距離を取らせて打たせています。病院に行くと、逆に菌をもらう可能性もありますし、とにかくケガだけはしないでくれと願っています」