吹奏楽部員58人がひとつに…野球名門校の“テレワーク演奏”動画の制作秘話

千葉・船橋市立船橋高校の吹奏楽部【写真提供:市立船橋高校吹奏楽部】
千葉・船橋市立船橋高校の吹奏楽部【写真提供:市立船橋高校吹奏楽部】

千葉・市立船橋高校が制作、部員の思いが込められた「市船SOUL」も演奏

 春の高校野球県大会も全国で中止が決定。野球部を応援する吹奏楽部も同じように活動休止となり、応援や公演の機会がなくなっている。そんな中、千葉・船橋市立船橋高校の吹奏楽部がSNSに載せた動画が話題になっている。野球応援などに使用する曲を3年生全員が自宅で収録し、動画を一緒に流すことで演奏する動画を製作した。

 市立船橋といえば、春夏通じて7度の甲子園出場し、1993年夏はベスト4に進出するなど、多くのプロ野球選手を輩出している。ツイッターには「市立船橋高校吹奏楽部 テレワークで応援ソングに挑戦」とつづり、どの時代でも流れ、選手とスタンドの心を繋いできた市船吹奏楽部にとって大切で思いの深い曲「市船SOUL」や「アッコちゃん」「市船カモン」……知る人ぞ知る応援歌をメンバーが奏でている。

 提案したのは顧問の高橋健一先生。3月2日の休校以降、生徒に会えたのは入学式と始業式だけ。「何かできることはないか……」と毎日、朝9時にテレビ電話でパートごとに1時間のミーティングを設定。そこで、発声や練習その日できることを話し合って、部活動を続けてきた。

 まだ顔を合わせていない新入生には先輩が自己紹介動画を作り送り、自宅や近くの田んぼで自主練習をするなど、自分たちができることを行ってきた。しかし、それでも聞かれたのは生徒からの先の見えない不安の声だった。

「僕たちはこのまま卒業してしまうんですか?」

「どうすればよいのですか?」

 だが、高橋先生は、力強く言葉を返している。

「諦めるな、何かしら考えるから」と生徒を励ましながら見つけたのが、新日本フィルハーモニー交響楽団がSNSで発信していた「テレワークオーケストラ」だった。

 そこで白羽の矢が立ったのが、普段からYouTubeチャンネル「市船ゆーちゅー部」を編集しているメンバーの3年生、トロンボーンの北奥優羽さん。小学4年生から吹奏楽をはじめ、その時、出会ったのが市船吹奏楽部だった。吹奏楽だけではなく、YOSAKOIなどのダンスも踊る吹奏楽部に憧れを抱き、入学した。

 しかし、そのYOSAKOIの公演も新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止に……。

 トロンボーンのパートリーダーでもある北奥さんが話をしてくれた。

「ショックでダメージが大きかったです。でもそこからもっと色々なことができなくなって。ひとりひとりになって、何もできないということが一番つらいということを知りました。だからこそ皆で何かをしたいと思っていました」

 初めに数人でチャレンジしてみるところからスタート。まずは各自、自宅で声だけでメロディーを収録し、集めて、編集をした。「流してみたら、雑音だらけだったんです。風の音とか、家族の声とか……(笑)」

 そこから、家族に協力してもらい、収録中は静かにする、テンポを合わせるためにパートリーダーが指示をするなどのマニュアルを作成。そしてパートごとにパートリーダーにも編集を手伝ってもらうことにした。

パートごとの演奏がそろっていて感動、「鳥肌が立ちました」

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