代替大会も学年関係なし…東海大菅生・若林監督の“非情方針”に込められた真意

東海大菅生高校・杉崎成、小田村涼、栄塁唯、森下晴貴(左上から時計回り)【写真:荒川祐史】
東海大菅生高校・杉崎成、小田村涼、栄塁唯、森下晴貴(左上から時計回り)【写真:荒川祐史】

夏の大会中止にも立ち止まることのなかったチーム内の競争意識

 玉置真虎(まこ)主将(3年)は「部員が多く層も厚いので、みんながいい意味でライバルという意識。自粛期間中はLINEグループで練習量を互いに報告し合っていたんですが、練習をサボったらすぐにレギュラーを奪われるという怖さがあった」と自主練習中の取り組みを語る。1年生から中軸を担ってきた杉崎成(なる=3年)でさえ「うかうかはしてられない」と危機感を募らせ、秋の大会ではスタメン落ちした小田村涼(3年)も「今年は2年の突き上げが激しい。後輩にいつポジションを奪われるかと思うと、手は抜けません」とまったく緊張感の変わらない自主練習の日々を明かした。

「監督ならそういうと思った」と口々に語るナインからは、どんな形であれ勝利を希求し、レギュラーを勝ち取るという強い意思が伺える。夏の大会中止というショッキングな報せにも立ち止まることなく練習を続けてきたチームは、辛口な指揮官に「久しぶりに練習でも、打力はまったくブランクを感じなかった。打線は紛れもなく過去最高。少しうれしくなりましたね」と語らせるまでに成長した。

「甲子園や日本一は目標であって、目的は人間形成。目標がなくなったからと言って、目的までなくなるわけじゃない。それなら、今まで通りやり続けること。大会や試合がある限り、全力で勝ちに行く方針がブレちゃいけない。今年は毎試合入れ替えができるので、なるべくなら使ってやりたい気持ちもあるが、一番は勝つこと。そこは変えずに、東京のてっぺんを取りに行きますよ」と若林監督。甲子園という目標を失ってなお、練習の手を止めることのない競争意識が、彼らにとっては何より強い心の支えとなっている。

(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)

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