6月の練習試合で乱打戦頻発…データで検証、開幕延期は投手の調整に影響を与えたのか
乱打戦頻発の理由は? 本当に投手は調整不足なのか…
ただ乱打戦が多かった=投手のコンディションが悪かったと結びつけるのは早計です。それ以外の要因が乱打戦を生んでいる可能性も十分に考えられるためです。また、探せば調整の遅れている投手もいたかもしれませんが、その数名の投手の調整遅れをもって開幕延期の影響が出たとはいえません。
そこで今回は、NPB全体のストレートの球速に注目したいと思います。毎年選手の入れ替わりが多くあるプロ野球界ではありますが、ストレートの球速を集計した場合、毎年それほど大きな変動はありません。6月に行われた練習試合におけるストレートの球速が、例年のNPB全体の球速から逸脱して遅くなっているようであれば、それは開幕延期による調整の遅れであると考えられるのではないかと思います。
またストレートの平均球速は開幕時が最も遅く、その後はゆるやかにスピードが増していくことが研究によってもわかっています[1]。これらから、単純に昨季とストレートの球速を比べるのではなく、月別に分けてストレートの平均球速を比較してみたいと思います。
まず昨季までの月別の球速から見ていきましょう。イラストには2017-19年の3・4月と6月のストレート平均球速が示されています。2019年で見ると、3・4月のストレート平均球速143.6キロに対し、6月は144.4キロ。この年の場合、6月と開幕当初では0.8キロほどストレートの球速差がありました。これは2017-18年でも変わりません。前述の研究のとおり、シーズンが進むほどにやはり球速は上昇していくようです。
その傾向が今季についてどうなっているのかを見てみましょう。今季は調整不足が懸念されるため、例年のようにこの時期に球速が上がっていない可能性は十分考えられます。2020年についてはオープン戦、3月の練習試合、6月の練習試合の3つで比べました。これを見ると、オープン戦が143.2キロ、3月の練習試合が143.2キロだったのに対し、6月の練習試合では144.3キロ。例年と同じように6月にストレートの球速は向上していました。
また2019年の6月のストレート平均球速は144.4キロ。今年の6月の練習試合における144.3キロは昨季6月のレギュラーシーズンに比べても遅くありません。ストレートの球速だけで投手のコンディションのすべてを語ることはできませんが、少なくともスピード面から調整不足である様子は感じられませんでした。