ビールを手指消毒用アルコールに再利用 DeNAが込めたファンと生産者への想い
球団オリジナル醸造ビール再利用に込められた2つの想いとは
球場に限らず、コロナ禍により広く飲食業界は大打撃を受けることになった。ややもすると閉じた思考になりそうな中で生まれた前向き発想。そこには、球団が抱く2つの想いが込められている。
「なるべく自粛期間中でも、ファンの方のために何かできないかというところは意識していました。開幕した時にきちんと球場にお迎えできるように準備しておこうと動いていた1つが、消毒用アルコールでした。ここで止まっていても仕方ない。今できることは何なのか、ファンの方に喜んでいただけることは何なのか。これはコロナ禍に関係なく、常に考えていることですね」
そして、もう一つは「ビールを造ってくれた方たちへの想い」だ。
「無駄にしないというところでは、ビールを造ってくれた方たちへの想いもあります。僕たちの球団オリジナル醸造ビールは、ビールメーカーさんと企画し、たくさんビールを試行錯誤しながら造っているものなので、いろいろな方の想いが詰まっています。それを開幕延期の関係でご提供ができなくなったという理由で簡単に流して捨ててしまうのは、費用はもちろん、想いの部分がもったいない。普段からビールメーカーさんとコミュニケーションを取る中で、想いを無駄にしない、いい形が取れたんじゃないかと思います」
7月10日から段階的な有観客試合が実施され、球場にも少しずつ活気が戻ってきた。自分たちが手掛けた球団オリジナルフードやドリンクを楽しむファンの姿が客席に戻り、「今は数少ないですけど素敵なことだと思っています」と山岸さん。今後は新しい生活様式に合わせて「違うアプローチ」を模索していくという。今回のビール再利用は、まさに違うアプローチの第一歩だったと言えそうだ。
「再利用はないに越したことはないですが、次に考えていかないといけないのはSDGs(持続可能な開発目標)という観点から何ができるか。飲食業界でも取り組みが増えてきているので、そこを考えていく必要はあると思います」
コロナ禍からどうやって前に進んでいくか。山岸さんをはじめ、横浜DeNAベイスターズ飲食部のチャレンジは続く。
(佐藤直子 / Naoko Sato)