球児に捧げる「#2020僕らの証」 ヒロド歩美アナがハッシュタグに込めた思いとは

ヒロド歩美アナは「2020高校野球 僕らの夏」に出演中【写真提供:ABCテレビ】
ヒロド歩美アナは「2020高校野球 僕らの夏」に出演中【写真提供:ABCテレビ】

もう一通のメッセージ 「パワーソングがほしい」

 ヒロドアナは取材者としてのあるべき姿を考える日々は続いている。

「自分にも伝えたい現実が出てきて、インタビューをすることで彼らが高校野球をやっていたという証になるのではないかと考えました」

 高校野球の取材をし、今年で7年目。一定の層には、高校野球の取材者として認知さえている存在になっている。できるだけ球児の現実を見て、言葉を聞こうと思った。球児の中にはヒロドアナの取材で、少しだけ甲子園に行けた気分になったかもしれない。それだけでも、高校野球をやった証を記せたのではないかとも思う。

「例年、甲子園で戦う球児の素顔をたくさん届けようと思っていますが今年は少し違います。辞めてしまった球児もいますし、リアルな声を届けないといけないと思っています」

 行ける限り、学校の取材に行こうと思った。もしかしたら、全国を飛び回ることに批判があるかもしれないという懸念もあった。「でも、今しかないんじゃないか、と思って。番組で記憶に残すこともひとつの僕らの証なんじゃないかと」

 甲子園交流試合当日の取材も、学校側や選手に配慮して時間は制限される。多くのメディアが混在するから、自分だけ特別に長い時間、取材するわけにもいかない。だからこそ、「2020高校野球 僕らの夏」(8/10【月・祝】~17【月】連日放送、関西ローカル、TVer、バーチャル高校野球で翌日配信、雨天順延あり)などでしっかりと思いを届けるために、大会前にヒロドアナは足を運び、距離を保って、話を聞いた。

 もう一つ、心動かされたメッセージがあった。「僕らのパワーソングを作ってほしい」というものだ。

「球児は自分が3年生だった時の夏の甲子園(熱闘甲子園)のテーマソングを大事にというか、よく覚えていて、自分だったら「宿命」(Official髭男dism)とか……でも、今年は“熱闘―”がないので『僕の代の曲はこれだ』というものを作ってあげることはできないかなと…」

 テレビ局にも同様のリクエストが届き、スタッフたちが球児のためにすぐに動いた。2020年のパワーソングは誕生した。ベリーグッドマンの「Dreamer」だった。「柔らかいメロディーや心地よい歌声が球児の背中を押してくれるような歌です」。この曲が心に残っていく限り、今夏、戦った球児たちは、それがこの時代を生きた証となり、野球と向き合ったこの1年を忘れないのではないだろうか。

 球児への取材を続けていくと、今年の3年生にとってはコロナ禍が大きな壁だったことを痛感する。どのように自分なりの言葉をかけていいか悩む。自分は球児ではない、OBでもない。「だから私の意見、声はかけられません」と足元も見つめる。

 自分の言ったこと、もしくは経験を伝えることが正しいかと言われれば、そうではない。「私は困難をこうして乗り越えたよ、などは言えません。だから、取材を通じて、元球児の方に聞いたらこんなことを言っていたよ、と伝えました」
 
 結果的に、ヒロドアナは球児から次へ進む力をもらい、今、高校野球の番組を作っている。

「最初に寄り添うことはできない、と言いましたが、本当のことを言うと、私なんかが寄り添う必要はないくらい、出会った球児は強かったですね(笑)。進んでいく道に迷いはない感じでした」

 ハッシュタグや音楽を通じて、証を刻む夏。ヒロドアナにとっても特別な年となった。また新しい球児たちの顔に出会った気がした。

2020年甲子園高校野球交流試合の期間中、同局で放送される「2020高校野球 僕らの夏(8/10【月・祝】~17日【月】連日放送、関西ローカル、TVer、バーチャル高校野球で翌日配信、雨天順延あり)

(Full-Count編集部)

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