「投高打低」の中日、5試合連続完投勝利の大野雄に表れた明らかな“変化”とは?
守護神R・マルティネスが奮闘、9回の失点確率は12球団で最小
次に、中日の各ポジションの得点力を両リーグ平均と比較し、グラフで示した。昨年のグラフと比較して、昨季の弱点が補えたのかどうかを検証してみる。
グラフでは、野手はポジションごとのwRAA、投手はRSAAを表しており、赤色なら平均より高く、青色なら平均より低いということになる。
大野雄を中心とした先発投手陣は、リーグ平均に比べプラスの貢献。大野雄以外で唯一の完投経験者ある入団2年目の梅津は、先発7試合でクオリティスタート(QS、6回以上で自責点3以下)率57.1%、奪三振率8.93。同じく2年目の勝野は、9月21日現在で先発7試合中4試合でQSを達成、奪三振率6.75。またY・ロドリゲスも最速156キロのストレートを武器に奪三振率9.73、QS率60%を記録するなど、3人の23歳の若手先発投手陣が頭角を現し始めた。ただ、梅津とロドリゲスは現在、登録抹消となっている。
救援投手陣に関して特筆すべきデータも。完投試合を除いて6回までリードをすると、22勝2敗2分、勝率.917となっている。さらに、9回の失点確率9.6%は12球団で最小の数値である。クローザーR・マルティネスの安定のピッチングの賜物ということだろう。
野手でのプラス評価は一塁のビシエドのみで、他のポジションでのアドバンテージを獲得できていない。また打順別でも5番のみがプラスと、リーグ最小得点の攻撃陣を物語るグラフとなっている。
そんな中、ファームでは8月28日から1分はさんで10連勝を記録。根尾、石川昂を3、4番に据えたオーダーで、将来の軸を担うプロスペクトの育成に取り組んでいる。このようなチーム状況であるからこそ、1軍での実戦経験による育成に切り替えのタイミングを見極める時期なのではないだろうか。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。