オリ吉田正、イチロー以来の生え抜き首位打者へ データに示された類稀なる数字

フルスイングだけじゃない、卓越した選球眼

 吉田正が高い打率を記録し続けているのは先述の通りだが、決してフリースインガーというわけではなく、優秀な選球眼を持ち合わせているのも大きな特徴といえる。プロ2年目の2017年以降、毎年.400を超える高い出塁率を残しており、チャンスメイクという観点でもその貢献度は高い。時にはチームのために冷静に四球を選べるという姿勢も、吉田正の打者としての価値をより高めている。

 高い打率と出塁率に加えて、多くの長打も生み出している吉田正の打撃は、野球を統計学的な側面から捉える「セイバーメトリクス」の観点からも高い評価を受けている。吉田正がプロ入り以来残してきた、出塁率と長打率を足して求める、得点との相関性が高い指標の一つとされている「OPS」の数値は、下記の通りとなっている。

吉田正の打撃指標【画像:(C)PLM】
吉田正の打撃指標【画像:(C)PLM】

 一般的に、OPSは.800を超えれば一流、.900を超えればリーグを代表する好打者とされている。そして、吉田正はプロ1年目の2016年にいきなりOPS.854という数字を残すと、2017年以降は3年連続でOPS.900を突破。2018年からは2年連続で全試合に出場したうえでOPS.956という素晴らしい数字を記録しており、指標の上でもトップクラスの打者と呼べるだけの結果を残している。

 続けて、今季の吉田正が残してきたコース別の打率を見ていこう。ボールコースも含めて各エリアを25分割したゾーンの中で、今季の吉田正が結果球(ラストボール)となった球に対して残してきた打率は、下記の通りだ。

吉田正のコース別打率【画像:(C)PLM】
吉田正のコース別打率【画像:(C)PLM】

 このように、内角および四隅のボールゾーンを除く場所であれば、ほぼ全てのコースで一定以上の数字を残していることがわかる。辛うじて真ん中から低めのアウトコースが苦手と言えなくもないが、それでも「4回に1回は打たれる」というレベルであり、外角高めや、さらに遠いボールゾーンに行けば3割以上の確率で打ち返されることを考えても、外角を攻めれば安全とはとても言い難いだろう。

 また、内角以外のボール球は高低を問わずほぼ3割以上の数字を記録しており、通常であればバットが届きにくいであろう外角のボール球に対しても優れた数字を残している。すなわち、「高めの釣り球」、「低めに落ちる球」、「アウトコースに外す球」といった、本来リスクの低い配球に対してもヒットというかたちで対応してくるということだ。

 ストライクゾーンの球ならそのほとんどが痛打され、かといってボールゾーンで安易に様子を見ることも許されない。そのうえ、先述した通りに吉田正は抜群の選球眼まで兼ね備えているのだからたまらない。吉田正と対戦するバッテリーが往々にして苦しい投球を強いられているように映るのは、なにも強打者としてのイメージだけが理由ではないのだ。

 次に、吉田正が今季記録してきた、球種別の打率についても見ていきたい。

吉田正の球種別打率【画像:(C)PLM】
吉田正の球種別打率【画像:(C)PLM】

 コース別の打率と同様、球種別の打率という点でも大きな穴が見当たらないという結果に。この中でもっとも打率が低いのはスライダーだが、それでも打率.279と決して低くはない数字にとどまっている。チェンジアップとカーブに対してかなり優れた数字を記録していることからも、タイミングを外して打ち取るという策が易々と通用する打者ではないことが読み取れる。

 それに加えて、ストレート、シュート、カットボール、シンカー・ツーシームといった、速い球に対しても十二分に高い打率を残しており、緩急どちらに対しても苦もなく打ち返している。さらに、多くの投手にとって決め球となりうるフォークに対しても.400を超える打率を記録しており、低めのボール球を得意としていた先ほどのデータと照らし合わせても、追い込まれてから決めに来る球を安打にできる対応力の高さが感じられるところだ。

 打球方向に目を向けると、右への引っ張りが30本、センターへの安打が38本、左方向への流し打ちが21本、右中間6本と左中間5本と特定の方向に大きく偏ることなく、ある程度まんべんなく打ち分けていた。その一方で、今季記録した12本の本塁打は右方向が多く、安打と本塁打で打球方向に差異が見受けられるのも興味深いところだ。

手術によりケガを克服して以降、2年連続で全試合に出場

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