「常勝チームには必ず良い伝統がある」 元コーチが指摘する鷹・松田宣の“凡事徹底”

受け継がれる常勝ホークス「柳田ら下の世代の選手が、マッチの背中を見ながら伝統を継承しつつある」

 森脇氏は「常勝チームには、必ず良い伝統がある。ホークスの場合は、攻守において常に技術の確立を自分に求め、主力やベテランこそ声を出し、凡事徹底を実践すること」と語る。その上で「マッチ(松田宣)は、04年に3冠王を獲得した松中(信彦氏)らからホークスの伝統を引き継ぎ、川崎(宗則内野手=現BCリーグ・栃木)、本多(雄一氏=現1軍内野守備走塁コーチ)らとともに真のファイティングスピリットを発揮してくれた。今は柳田ら下の世代の選手が、マッチの背中を見ながら伝統を継承しつつある。自分の言動がどれほどチームに影響を与えるかも、マッチはよく知っている。連続試合が止まった時のコメントも、彼らしくて素晴らしかった」と評する。

 松田宣は5点リードの3回無死二塁では、送りバントを試みたが、初球を空振り。1球ボールの後、3球目もファウル。追い込まれてからヒッティングに替わったが、空振り三振に倒れた。犠打は、打線の中軸を務めた15年から18年まで0。昨季は2度決めたが、今季はここまで1つもない。

 森脇氏は「短期決戦となれば、試合の序盤からマッチに送りバントを命じることも十分ありうる。工藤監督としては、そういうことも見越してバントをさせておきたかったのだと思う」と察し、「私はよく覚えているが、マッチのプロ初打席(06年3月25日・ロッテ戦)は送りバントだった。チーム優先が身にしみついた選手だから、送りバントのサインを不満に思うようなことは1%もありえない」と断言する。

 事実、松田宣が入団する以前、2000年の日本シリーズでは、4番で本塁打王を獲得した経験もある小久保氏が送りバントを決めた。「マッチのような主軸を期待する選手ほど、入団当初からそれを伝えた。我々は日本一を目指すチームで、日々の積み重ねが明暗を分ける、という文言も口癖にしていた。1日数本であっても、真剣に取り組むバント練習に大きなメリットがあることを、マッチは一番心得ている。明日から今まで以上の意識で取り組むことだろう」と森脇氏。

 王監督時代から脈々と受け継がれ、昨年まで3年連続日本一という形で花開いた伝統を、松田宣という選手は体現している。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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