先発投手はゲームを作ろうとするな― 天才・前田智徳氏が分析する巨人逆襲のポイント
前田氏は91年日本シリーズを経験「勝てると思った時はプレッシャーを感じました」
孤高の天才打者として通算2119安打をかっ飛ばした。そんな前田氏が対戦して嫌な投手が、まさに初球から勝負球を投じる、1球入魂の投手だったという。
「打者の立場から打席に立った時に、やっぱりそういう投げられ方は嫌ですね。ゲームを作ろうとして投げる投手は(投球に)強弱をつけるというか、緩んだところがあるんですよ。でも、そうでない投手は投球動作に入った時からスキを与えてくれないというかね。そういう感じがあるので」
「サンチェス投手はストレートが速いですけど、ソフトバンク打線に対してファウルを取れるか。それが厳しいようであれば、初回から多めにチェンジアップ、カットボールを投げていくしかないと思うんです。それぐらいの気持ちで1アウト、2アウト、1イニングと切っていかないと」
前田氏自身は91年に日本シリーズを経験。相手は常勝・西武だった。第5戦を終えて3勝2敗で王手をかけたものの、敵地に舞台を移した第6戦から連敗してV逸。当時は高卒2年目だった前田氏は「僕は守備を買われていたので、鬼軍曹(大下ヘッド)から『塁に出たら走れ。打席ではバントしておけ』と言われていた」と振り返ったが、短期決戦の怖さを身を持って感じている。
「(王手をかけた時に)若いなりに『これはいけるんじゃないか』と。ふと我に返った時に硬くなった。プレッシャーが増したかなというのはありますね。これは先輩方も同じだったと思います。僕が『これはいけるんじゃないか』と思ったということは先輩方はもっと思っていた可能性があるので。僕より周りがよく見えているわけですから。王者に勝てると思った時はプレッシャーを感じましたよね。挑戦者の時は、戦いやすいですよ。あれだけ強いというのは分かっているので」
仮に、この心の“スキ”がソフトバンクにあれば、巨人は突かない手はない。だからこそ、まずは緊迫したゲーム展開に持ち込むことが巨人に不可欠だと言う。
「当時のカープの投手は良かった。なんとか打線を抑えて、点を取れなかったですけど、(西武相手でも)やっぱりいい勝負になるんですよね。なので、ジャイアンツ。菅野投手で落としたんですけど、先発、リリーフで抑えればいい勝負になりますよ。日本シリーズなので、熱い戦いをしてもらいたいですね」
前田氏は第3戦を解説する。球界OBとして、痺れる熱戦を期待している。
(小谷真弥 / Masaya Kotani)