なぜ鷹・周東佑京は速いのか? 元巨人・鈴木尚広氏が分析する6つのポイント
巨人で通算228盗塁をマークし、走塁の神として原野球を支えた鈴木氏
4年連続日本一を飾ったソフトバンクの周東佑京内野手は、今季50盗塁を決めて育成ドラフト出身初の盗塁王を獲得した。開幕当初はベンチスタートだったが、10月はほぼ1番打者に定着。13試合連続盗塁の世界記録を樹立した。では、パ・リーグ盗塁王はどこが優れていたのか? 巨人の走塁のスペシャリストとして活躍した鈴木尚広氏にポイントを分析してもらった。走塁を突き詰めてきた男だから見て取れたものとは……。
現役時代、その足を武器に巨人で20年間、プレーした鈴木氏。現役の晩年、試合の終盤、勝負所で代走で出場すると場内の空気は一変した。足で1点をもぎ取り、制したことも多かった。周東とは置かれている状況は違うが、盗塁に研究と練習を重ねて、走ることへの奥深さを知ることは同じだ。
(1)1歩目のリアクションが小さい
「周東選手の1歩目、よく見てください。動き出しが本当に小さくて、速い。これは右股関節に重心が乗り、始動できているからです。僕の場合は軸を大事にして立っていた。片方に傾きすぎるとスタートが合わなかったので真ん中で立つようにしていました。周東選手は右なので、次への動きが少なく、小さいんです。動きが小さいと捕手も打者が左打席にいると走ったことに気付きづらいと思います」
(2)方向転換と加速が瞬時にできる
「2歩目か3歩目でトップスピードに乗っていますよね。映像を見ると、その2歩、3歩で砂煙が舞っているときもあります。走者としては0歩(ゼロ)で加速したいくらいの気持ちでいます。自分も3歩目でトップに乗ることが勝負だと、心がけて練習してきました。そのポイントは足裏の接地にあると思います。足裏の使い方は(4)で分析します」
(3)二塁まで最短、真っ直ぐ進むことができている
「これが簡単そうに見えて、なかなか難しい技術です。プロでも多少膨らんで走ってしまう。周東選手は自分の走るラインのイメージができている。指導者の方がコーチングする時は、線を書いてあげるのがいいと思います。それくらい、はっきり見えていないと難しいものをイメージ通りに走れている。体がイメージ通り、動かせているというのも大きい」