「デジタルネイティブ世代」の球児に感じる“弱さ” 北の名将が日誌を導入した訳

「練習でできないことは、試合でできない、ということが分からない」

「今の子は、意識的に物事を進める能力が弱い。頼めば何とかなるということが多いから。買い物に行けなければ、ジュースや洗剤が送られてくる。実際に自分で洗剤を買いに行けば、どれくらい持ちそうだとか判断ができるようになるんだけどね」

 自らやってみなければ、経験値として積み重なってはいかない。日常生活の一コマは、そのままグランドへのプレーへと転嫁される。佐々木監督が抱えるもどかしさを言葉に落とし込む。

「練習でできないことは試合でできない、ということが分からないんだよ。何とかなるだろうと思ってしまう。情報が多過ぎて、情報をしっかりつかむ力が弱い。見て、簡単にできると甘く見る子が多い。覚えたことを持続できるか、自分のものとして確立できるかが大事なんだけどね」

 物心ついたころからインターネットで世界と繋がる「デジタルネイティブ世代」。スマホやパソコンを開けばすぐ“答え”は手に入る。無駄な時間が排除された一方で、考える過程で得られる気付きは薄らいでいく。

 佐々木監督は、球児たちと一緒に生活しているからこそ、小さな変化にも素早く察知できる。同じように家族で寮を運営していた駒大岩見沢時代は朝の点呼のみだったが、クラーク記念国際では日誌も導入。「考える時間を毎日の習慣にさせないといけない」と意図を語る。

 さらに昨夏、越智さんが亡くなった後、冒頭の言葉を日直が必ず読み上げるようにした。「違うことを言うよりも、念仏みたいに同じことを言い続けた方がいい」。この学校に来た目的、成し遂げたい目標を再確認させ、今何をやらなければいけないのかを考えることから1日をスタートさせる。

 どんな練習をするかの前に「最近は練習にどう向かわせるかが仕事だね」。そう言って佐々木監督は笑う。次男で野球部長を務める達也さんが練習を仕切ることが多くなり、佐々木監督の役割はメンタル面のケアへと変化。あの手この手で、選手の意欲を刺激する。

○佐々木啓司(ささき・けいじ)
 1956年2月7日生まれ。42年の指導歴を誇る大ベテラン。駒大を卒業後、1978年に母校の駒大岩見沢監督に就任して35年間で公式戦通算503勝を挙げた。2003年には全日本アマチュア野球連盟選手強化部AAA強化部会委員を務めた。14年にクラーク記念国際監督に就任し、創部3年目の16年夏に北北海道大会を制して、甲子園初出場。その後18年、19年と2年連続北北海道大会準優勝し、今夏の代替大会でも優勝と常勝軍団に成長させた。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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