データと捕手の証言から紐解く 沢村賞の中日・大野雄大が10完投もできた理由とは?
年々ストレートの球速がアップ「分かっていても空振りやファウルが取れた」
落とされると手が出ない。では、ストレートはどうか。今季も投球の半数以上を投じた生命線も、やはり手がつけられなかった。木下拓は、今季の直球の凄みをこう語る。
「やっぱり軸は真っ直ぐ。今年は真っ直ぐでカウントが取れたことがすごく助かりました。打者が真っ直ぐ狙いだと分かっているタイミングで投げて、空振りやファウルが取れる。そうすると、より組み立てやすくなるし、フォークも効果的に使えました」
今季の平均球速は146.2キロで、こちらもキャリア最高。2016年以降は140.2キロ、142.8キロ、144.1キロ、145.9キロと年々スピードアップしていることにも驚かされる。実際、投じたストレートがどれだけ失点減少に貢献しているかを示す「wFA」も、19.3で12球団の投手トップ(規定投球回に達した投手に限る)の数値だった。
直球の威力と、落ちる球の有効性。この両輪が生む打者心理こそが、10完投を導いたと木下拓はみている。
「打者も追い込まれたらきついと感じていたようで、シーズン終盤になるにつれて打席での仕掛けも早くなっていきました。それを逆手にとって1球で打ち取れたり、少ない球数で抑えたりすることも増えました。その結果、球数が抑えられて完投が増えたというのもあると思います」
データと自身の感覚を照らし合わし、10完投という結果に大きくうなずく木下拓。球界屈指のエース左腕の快投を支えた2020年。「受けてて、本当エグかったっす」。最も身近で凄みを感じられたことに充実感をにじませていた。
(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)
データ提供:DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。