元燕・増渕竜義氏の今と88年世代への感謝とエール「佑ちゃんも可能性を秘めている」
巨人坂本、ホークス柳田らと同世代「同い年の選手が活躍していると励みになりますし、力をもらっています」
特徴的なのは、塾生全員にB5ノートを配布し、月1回の“交換日記”を行っていること。目標、塾で頑張りたいこと、教えてもらいたいこと、その月の反省と指導者からほめられたことなどを書かせている。「野球は投げるのも打つのも、感覚のスポーツ。やるのは自分ですから、書きながら自分と向き合うことが大事だと思います」と説明する。「おもしろいですよ。子供が100人いれば、考えも100通りです」とうなずいた。
ヤクルト入団当時は、「ヤクルトレディ」(宅配販売員)として勤務していた母・洋子さんに女手ひとつで育てられたことが話題になった。増渕氏自身、5歳下の弟・雅也さんが東洋大に進学する際には、学費などを全額支払い、家族をサポートしていた。そして、一昨年12月には結婚。妻の実家がある千葉県に居を構え、毎日車で2時間かけ練習場に通っている。来年3月には第1子の長男が誕生する予定だ。
現在32歳。同世代の顔ぶれは豪華で、今も第一線で活躍している選手がいる。「すごいですよね。ギータ(柳田)にしても、勇人(坂本)にしても、マー君もマエケン(前田健太投手)も……。同い年の選手が活躍していると励みになりますし、力をもらっています」と言う。
特に、高校時代に同じ埼玉でしのぎを削った西武・木村文紀外野手は、毎年シーズンオフに練習場に顔を見せてくれる。木村も埼玉栄高時代は県内屈指の好投手。2年生の秋の県大会で、増渕氏の鷲宮高は0-1のサヨナラ負けを喫した。最後の夏には「決勝で投げ合おう」と誓い合っていたが、埼玉栄高は早々と敗退、鷲宮高も決勝で浦和学院に敗れ、甲子園出場はならなかった。
この世代にとって、高3の夏に最高峰の甲子園大会を制したのは、言うまでもなく、日本ハムの斎藤佑樹投手を擁する早実高である。増渕氏はヤクルトから日本ハムへ移籍後、斎藤と同僚となり、「ミーハーかもしれないけれど、佑ちゃんと一緒に野球ができてうれしかった」と明かす。斎藤は2020年、右肘の故障で1軍登板なしに終わったが、「可能性を秘めていると思う。最後の最後まで頑張ってほしい」とエールを送る。
野球塾開講から4年目を迎え、昨年春には教え子が春日部共栄高の一員として甲子園出場を果たした。「今の目標は、このスクールからプロ野球選手を出すことです」とキッパリ。ユニホームは脱いだが、増渕氏の熱意は別の形で再びプロ野球へつながろうとしている。
「上尾ベースボールアカデミー」
練習場:埼玉県上尾市中分2-291
電話:090-8517-5811、048-677-5718
対象:幼児・初心者、小学生、中学生
※室内練習場のレンタルも行っている
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)