「クビを何回言われたか…」3度“戦力外”の元プロ監督 生徒たちに伝えた経験とは
新チームから監督に…厳しい勝負の世界に身を置いていたからわかることとは
その喜びが島田監督の原動力となっている。選抜当確を決めるまで、決して順風満帆とはいかなかった。今春、学校から打診を受け、常総学院のコーチに就任。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、部活動は活動自粛に。全選手の名前を覚えようとしている最中だった。今の3年生には十分なアドバイスを送れないままだった。
夏の独自大会は3回戦で敗退。名門復活を託され、7月の新チームから監督となった。今の生徒たちは自分から率先して動けない集団だったため、プロの練習のようにグループ分けをして、早いサイクルでフリー打撃、ティー打撃、基礎トレーニングなどを回すような練習を導入。放課後のチーム練習は約2時間程度に抑え、後は自主練習の時間を作った。
時間は待ってはくれない。たくさんあると思ってもいけない。一瞬、一瞬に全力を注ぐ意識を持たせ、無駄な時間を省いた。
それは引退してからの野球人生で学んだ感覚だった。
「監督1年目ということで、プレッシャーはすごく感じました。結果が出るのは早かったと自分でも思います。今後、負けられなくなっちゃいますよね(笑)。でも、ある意味、結果を早く出した方がよかったのかなとも思います。『2、3年後でいいよ』って言われたとしても、その2年後、3年後に僕が(学校に)いるかどうかなんてわからないですから。子供たちにも、一年一年が勝負と教えています」
勝負の世界に身を置いてきたからこそ、自信を持って言える。島田監督はすぐに結果を出すことに尽力した。勝つことだけを叩き込むのではなく、社会に出ていく人間として大切なことも教えてきた。
「僕は教員でも何でもないので、野球で教育をしながら大事なことを覚えていってもらうしかないんです。それこそ、レギュラーが絶対じゃないし、今後、社会に出てメンバー外だった人だって、エリートになる可能性だってある。そういうことも教えていかないといけないと思っています」
ベンチ内でのコミュニケーションは欠かさない。「口下手で人見知り」と自認するだけあって、決して簡単なことではない。だが、監督に直接、話しかけらた選手は些細な事でも嬉しい。それがわかっているから、選手の特徴を理解し、語りかける。
「当然、みんな、背番号をもらいたいと思ってやっています。だけど、それだけじゃないよというのも言っていかなきゃいけない。逆に背番号をもらった選手は、必死でやらないとダメだよと言うことも伝えています。みんなの代表なんだから」
野球で花を咲かせることができる時間は短い。いつ終わりが来るかはわからない。ただ、可能性がある限り、子供たちには野球に携わり、成長をしていってもらいたい。喜びも苦悩もプロ23年間で経験してきたからこそ、その経験を還元していくことが使命でもある。
(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)