夫を翻意させた妻の一言 「戦力外通告」の出演交渉は“1割の可能性”から始まる
29日午後11時10分から放送の人気ドキュメンタリー「プロ野球戦力外通告」
もしも自分が会社をクビになったら、それをさらけ出すことはできますか? 年末の風物詩となっているTBS系ドキュメンタリー番組「プロ野球戦力外通告」が29日午後11時10分から放送となる。今回で17回目を迎える。制作側にとって短い期間の密着取材でも一番、難しいのが出演交渉だ。本人だけでなく家族の出演許可も必要になるため、乗り越えるべき壁がいくつも存在する。
番組スタッフの熱意が伝わる時もあれば、思わぬ形で成就することもある。心に残る名場面の数だけ、担当スタッフの苦労がある。
まず行うのが出演オファーを出す選手の選定だ。
シーズンが終わると、メディアや球団発表で戦力外通告をされた選手の名前が少しずつ出てくる。そこから球団や個人へ出演交渉に入るのだが、現プロデューサーの後藤隆二氏によると、交渉までにたどり着ける選手は少なく、その中から出演OKをもらえるのは、ほんの一握りだという。
「多い時は30〜40人にオファーをしますが、承諾をいただけるのは1割いるかいないかです。例えば自分が会社員をクビになったとします。テレビからオファーが来て、カメラを向けられ、密着される。そう置き換えると辛いですから……。理解はできます」
密着取材をきっかけに家族ぐるみの仲になった番組ディレクターもいる。子供の運動会の撮影も頼まれるまでの間柄になったのは、オリックスを戦力外となり、その後、中日に入団した八木智哉投手(現・中日スカウト)とその取材者。八木さんの出演交渉は、本人は即OKだったが、最初は家族が難色を示したという。
「そういう中でも出演をしてくれる選手、家族の方には感謝していますし、本当に嬉しいことです。作り手側は彼らの人生を背負って、その瞬間を撮影し、描かないといけない。使命感を持って、挑んでいます」
八木さんの場合は自分の人生を形に残したいという思いから、取材を承諾。放送後の再就職先となった中日時代も、ふと立ち止まった時に、自分が出演した映像を一人で見て、心を奮い立たせていたという。
交渉役となるディレクターの熱意が成就した形だが、時には思わぬ展開で交渉がまとまったこともある。