リーグ最多32度の逆転負けを喫した楽天 今季の成果と課題を振り返る【野手編】
育成も経験した下妻貴寛、8年目でチャンスをつかむ
昨オフ、嶋がヤクルトに移籍し、正捕手が定まっていなかった楽天。一番手捕手として太田光捕手が期待され、開幕からスタメンマスクを被ったが、9月下旬に怪我で離脱してしまう。そしてその機会を生かし、成長を見せたのが26歳の下妻貴寛捕手だった。育成契約、独立リーグへの派遣も経験し、今季開幕前までの1軍出場はわずか13試合という苦労人は、勝負の8年目で巡ってきたそのチャンスをものにした。
9月2日の日本ハム戦で今季初出場を果たし、初打席で初安打と幸先の良いスタートを切ると、9月24日のロッテ戦では、「8番・捕手」で先発出場。すると第1打席で、楽天ファンの待つレフトスタンドへ待望のプロ初本塁打を放った。
配球面や、勝負どころでは代打を送られるなど、正捕手奪取へ向けてはまだ課題も多く残るものの、確実に自信をつかんだシーズンとなっただろう。今年の開幕前に支配下復帰を果たした際には、石井一久1軍監督(当時GM)が「自分で道を切り開いてくれた。まだ多くの技術や経験を学べる年齢なので期待している。頑張れ!下妻!」とコメントを寄せている。山形県出身の「魂」下妻選手の来年にぜひ注目してほしい。
楽天のリーグ順位は4位に終わったものの、打率.258、1029安打、534打点という打撃成績は、優勝したソフトバンクをも凌いでリーグトップだ。打点は12球団の中でもトップで、一度つながると止まらない今年の楽天打線の印象を裏付けている。しかし、失速したシーズン終盤は、淡白な攻撃で残塁の山を築く場面が多く、リーグワーストの87併殺打も見過ごせない。小技も丁寧に決められる強力打線を作ることが求められている。
また、打線の破壊力においては十分なインパクトを残した一方、昨年に引き続き盗塁数はリーグワーストの結果に終わった。今季のパ・リーグ盗塁王、ソフトバンクの周東が50盗塁を記録していることを考えると、チーム合計67盗塁は明確な機動力不足と言える。しかし昨季は47盗塁だったことから、意識の変化も垣間見えた。「機動力野球」は一朝一夕では浸透しない。小深田や辰己、田中和など足のある選手を筆頭に得点力を上げ、抜け目のない打線を構築したいところだ。