田中将大に潜む意外な“落とし穴”とは? 「自然と力が入ってしまいます」
ブルペンで球を受けた太田光は「すみません、あまり鳴らなくて」と頭を下げたが…
楽天に8年ぶりに復帰した田中将大投手は、7日に沖縄・金武町キャンプ初のブルペン入り。捕手を座らせ、変化球を交えながら52球投げ込んだ。2月中の実戦登坂、3月26日の公式戦開幕へ向けてまずは順調だが、「キャッチャーミットの音」という意外な落とし穴が潜んでいた。
この日、田中将の球を受けたのは、昨季チーム最多の67試合でマスクをかぶった正捕手格の太田光(ひかる)だった。ピッチング終了後、「すみません、ミットの音があまり鳴らなくて……」と頭を下げた。これに対し、田中将は「こっちからしたら十分鳴っていたし、『そもそも音のことは気にしなくていいから、際どいコースをストライクに取ってもらえるようなキャッチングをしてくれ』と言いました」と明かした。
日本では、「バチン」という大きな音を響かせて捕るのもキャッチャーの技術のうちとされている。ボールがミットを叩く音が響けば、気をよくしてますます調子を上げていく投手が多い。逆にミットの音が鈍いと、投手は「自分が思っているより球威がないのか」と疑心暗鬼になるものだ。
しかし、田中将は「向こう(メジャー)では、ミットの音は全然関係ない。僕も向こうへ行ってからは気にならなくなりました」と説明。「逆に『バチン』と音が鳴ると、気持ち良くなっちゃうんで、自然と(余計な)力が入ってしまいます」と語った。
同じく現役時代にメジャーでも実績を残した石井一久GM兼監督は、「アメリカでは座布団に包まれたような『ボス』という音をさせているけれど、日本のキャッチャーはすごくいい音をさせる。ピッチャーはその音で乗っていくこともあるから、(田中将には)『いい音がするからといって乗り過ぎないで』と言いました」と語る。
脂が乗った32歳で日本球界に復帰した田中将に衰えは見られず、使用球やマウンドの日米の違いも8年前までの経験があるだけに、それほど心配はなさそうだ。いま最も懸念されるのは、オーバーワークが故障につながることだろう。2月上旬のこの時期、メジャーではまだキャンプインもしていない。
「今日は、すごく見られてるなあ、と思いながら投げました。これだけ注目していただいて、カメラのシャッター音もパシャパシャパシャパシャ鳴って……。フフ、自然に力が入りましたよ」と冗談めかして語った。電撃復帰でいまや日本球界で最も注目され、期待される存在だけに、オーバーワークは厳に慎んでほしいところではある。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)