まるで現代のノムさん? 楽天・石井一久監督から見えてきた指導者理論
積極的に話題作り、その一方で選手とは積極的にコミュニケーション
石井監督はこのキャンプで自ら打撃投手を務める意向を示し、ブルペンでの投球練習まで披露していたが、結局実現しなかった。キャンプ最終日に「なんとか戦力になりたいと頑張ったが、体が思うように動かず、力のなさを実感しました」と笑わせた。
だが、もともと「新聞記者に原稿の行数、テレビ局の方には尺を聞いて、ある程度確保できるのであればやりたい」としていた経緯がある。結果的に予想を超える“マー君復帰フィーバー”が沸き起こり、メディアは連日田中将の一挙手一投足で持ち切りだったが、万が一チームが露出不足に陥るような事態となれば、自ら話題を提供するつもりだったのだろう。
一方、選手1人1人と膝を突き合わせて語り合うコミュニケーション能力に関しては、野村さん以上と言えそうだ。キャンプ中もあちこちでそういった場面が見られた。
ドラフト1位ルーキーの早川隆久投手(早大)は、20日の日本ハムとの練習試合(沖縄・金武)で実戦初登板を果たした後、「監督からは前々から『プロでは登板日の間隔が空き、ナイターとデーゲームでリズムも変わってくるよ』と伝えてもらっていて、改めて『そういうものに合わせて調整していくのが大事だよ』と言われました」と明かした。
同じ日本ハム戦に先発した田中将とも、降板後にベンチ内でひとしきり話し合った。話題は、メジャーに比べて軟らかいといわれる日本のマウンドについてだったそうで、石井監督は「最近は日本のマウンドも硬い。僕が日本に帰ってきた頃に比べれば、全然硬くなっている。ここ(金武)のマウンドは特別軟らかいけれど、ここで公式戦をやるわけではないから、あまり心配はない」と語った。石井監督自身も現役時代、メジャーで4年間活躍した後、2006年にヤクルトに復帰した経験があり、田中将にとって頼もしい道標となりそうだ。
現役時代には、先発当日の試合前でさえ、クラブハウスでテレビゲームに興じていたという伝説の持ち主。緊急事態宣言下の休日の過ごし方についても、「僕はテレビゲームをやります。ウイニングイレブンをやります」と明かした。47歳の今も、選手たちと理解し合える感性を持ち合わせているのかもしれない。公式戦となった時、選手たちをどう動かすのか。石井監督の立ち居振る舞いが今から楽しみでならない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)