「弱音を吐くな、笑顔でいろよ」怪我から復帰の巨人期待の主軸候補が胸に刻む言葉

巨人・山下航汰【写真提供:読売巨人軍】
巨人・山下航汰【写真提供:読売巨人軍】

リハビリ期間中に見ていた1軍左腕の一生懸命な練習姿

 貴重な時間は他にもあった。同じようにけがで育成契約となった左腕・高木京介投手がリハビリをしている時だった。

「京介さんはすごいなと思いました。育成契約になることが決まった次の日も、普通にやるべきことを表情ひとつ変えず、黙々とやっていました。辛かったはずですし、苦しい練習しているのに、全然、苦しそうじゃない。見ていて、やっぱり1軍の選手なんだと思いました」

 自分はどうだろうか。大好きな野球が奪われ、下を向いていた日々を思い出す。思うように患部が完治せず、ストレスばかりが溜まっていく。5月末にけがをしてから、7月までは気持ちが前をなかなか向かなかった。

「(けがが重なり)なんで、僕だけなんだろう……と思ったりもしていました。9月くらいにようやく治ってきて、野球ができるようになり、気持ちは戻っては来ましたが、結構、メンタルはやられていました」

 若手選手は負傷した主力選手がファーム施設でリハビリをする姿を見ることがある。1軍選手はそこで“真価”が問われる。自暴自棄になっていないか、けがをした時点よりもパワーアップしているか、前を見据えているのか……。巨人に限ったことではないが、チームはそのような歴史が繰り返されている。原、桑田、高橋由、小笠原、阿部、二岡……強い選手を作る球団の系譜は受け継がれたのかもしれない。

 もしも、下を向いているあの時の自分に声をかけられるとすれば、どのように声をかけてあげるだろうか?

「弱音を吐くな、笑顔でいろよ!……ですかね(笑)」

 これから成長の階段を昇っていく山下にとって、決して無駄な時間ではなかった。

「まだ(オープン戦)数試合ですけど、成長できたのかなと思います。まずは今あるチャンスを確実にものにして、支配下選手になって、1軍の試合に出ている姿を見せたいと思います。これからも自分との戦いです」

 インタビューを終えると、全体練習に先駆けて、ウエートトレーニングをするために部屋を出た。将来の主軸候補として期待を抱いた1年前よりも、精神的に強くなって、山下は戻ってきた。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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