バットの音の高低を聞き分ける― 巨人坂本ら支えるメーカー担当者の仕事とは?

巨人・坂本勇人が使用する「SSK」のバット【写真:荒川祐史】
巨人・坂本勇人が使用する「SSK」のバット【写真:荒川祐史】

過去には失敗も…巨人先発三本柱・槙原寛己氏から「こんなの振れないよ」

 93年から巨人を担当し、現在は坂本のバットをはじめ、岡本和真内野手、桜井俊貴投手らの用具を担当している。かつては失敗もあった。1990年代に巨人先発三本柱を形成した槙原寛己氏へ公式戦で使用するバットを納品した時のことだ。

「バットを倉庫に保管していたんですが、梅雨の時期で910グラムのバットが940グラムになってしまったんです。それに気づかずに渡してしまった。(槙原氏から)『こんなの振れないよ』と。(野球用品メーカーとして)やばいと思いましたよね。あらかじめバットの重さを測って、倉庫には保管していたんですが、ビニール袋に入れず、長時間そのまま置いていたのが原因でした。今では厚いビニールに入れているので、バットに水分が入り込むこともないので問題ないと思いますが、車のトランクの中でバットの重さが変わることもありました。バットは生き物。ちょっとでも気を抜くと重さが変わってしまうんです」。そんな失敗談も今の仕事に生かされている。

 岩元さんは大学まで野球選手だった。しかし、この仕事を始めてからは試合の見方も変わったという。「試合展開よりも道具に目がいってしまいます。職業病ですね。どんなアマチュアの試合でもメジャーでも、道具に目がいってしまいます」と苦笑いする。「日々の刺激もあるし変化もある。(野球用具に)日々の変化があるかと言われたら、私はあると思っています。他の仕事は出来ないですね」。野球用具を扱う“プロ”も華やかなプロ野球の世界を支えている。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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