ダルビッシュが2戦連続で封じた“世界一の打線” 心技が凝縮された中軸との駆け引き
2戦連続の好投も慢心はない「その上を行けるようにちゃんと努力をしたい」
5球目のスライダーがコールされず、首をかしげたダルビッシュ。この直後からターナーとの頭脳戦に拍車がかかる。カウント3-2から、球速がほぼ同じ140キロ前後のカッターとスライダーを内外角の低めに散らしたが、ターナーは3球連続ファールで凌いだ。
勝負に決着をつけたのは、内角“高め”に投じた約135キロのスライダーだった。この過程をたどると、先の3球は、的を絞っていた球で餌をまく格好となり、裏をかく変化球が決め球になったと捉えることもできる。相手が得意とする危ない球を回避する“消去法”の配球だけで、打率.350を超える好打者は封じられない。ドジャースの専属解説者で、80年代初頭から90年代中頃にかけてド軍のエースに君臨し、59イニング連続無失点の金字塔を打ち立てたオーレル・ハーシュハイザー氏は、この9球を「ダルビッシュが心理戦を制した」と称賛していた。
技術の粋を尽した3番ターナーとの戦いは“知のせめぎあい”でもあった。
2登板連続のドジャース戦で“絶対封じ”を課したジャスティン・ターナーとの勝負を5打数無安打4三振で終えたダルビッシュは、その心境を淡々と表した。
「この2試合たまたまそういうことになったというだけ。向こうもこれからどんどん自分のことを分かってくるでしょうし、厳しくなってくると思う。その上を行けるようにちゃんと努力をしたいと思います」
今季の公式戦で残されたドジャース戦は12試合。粘り強く理想に近接していくダルビッシュと奮起するターナーとの心技の勝負は、これからの楽しみの一つになった。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)