なぜ日ハム加藤貴之は安定し始めたのか ショートスターターから先発で起きた変化
四球が少なく制球力に優れる投球スタイル
今季は被打率も過去のシーズンに比べて大きく改善されており、そもそも走者を出すケース自体が少なくなっている。1イニングにつき何人走者を出すかを示す「WHIP」も0点台と素晴らしい数字だ。四球も安打も少ないという事実を鑑みても、今季の加藤が抜群の投球を見せているのは納得と言える。
加藤は7つの球種を操っている。このレパートリーの多さが万能性を支える要素の1つでもある。ただ、チェンジアップは2017年と2020年は、シーズンを通して1度も結果球とはなっていない。他の球種に比べれば、チェンジアップを使う割合は少なかったということだ。
今季に目を向けると、まず目につくのが、新たに使い始めたカットボールだろう。その効果は被打率.188にも表れているが、昨季以前から多投していたスライダーとの細かな差異による、相乗効果にも期待できる。2017年から4シーズン連続で被打率.240以下と元々有効な球種だったフォークの被打率が今季はさらに改善されているところも見逃せない。
また、昨季以前よりもチェンジアップが結果球になる割合が多く、被打率.000と完璧な数字を残している。緩急をつける効果のあるカーブは被打率.100台が2度、被打率.400が3度と年によってばらつきがある。同じくブレーキの利いたチェンジアップの割合増加は、打者側の対応をより難しくしていると考えられる。4月末の時点で7球種全てが結果球となっており、多彩な引き出しを例年以上に有効に使えていることがうかがえる。
過去5年間にわたって主力投手の1人として登板を重ねてきた加藤は、その能力を完全に開花させることができるか。28歳と、選手として最盛期を迎えようかという時期。チームのためにあらゆる局面で身を粉にして投げ抜いてきた左腕が「左のエース」となれるか否か。その投球に注目してみる価値は大いにあるはずだ。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)