飛躍への断章、菊池雄星の840球 “ピッチングをまかなう”メジャー3年目の境地
直球44%、カットボール34%で軸球が逆転「これだけ腕が振れたのは久しぶり」
これまでの投球の内訳はカットボール40%、直球30%、スライダー21%と、カットボールの主体が鮮明となったが、この日は88球中、直球が44%(39球)、カットボールが34%(30球)と軸球は逆転。各打者のスイングからカットに絞る雰囲気を察知しながら、直球を増やし5回2死一塁の場面では、内角97マイル(約156キロ)で詰まらせて1球で仕留めた。続く6回は、4人の打者に対して投じた15球中8球が直球だった。
自己最長の5試合連続クオリティ・スタート(QS、6回以上で自責点3以下)で、9試合中7度目のQSをマークした菊池は、晴れやかな表情で淀みなく続けた。
「今シーズンで一番いいストレートが投げられたと思います。これだけ腕が振れたのは久しぶり。もしかしてメジャーに来て初めてかもしれないです。ストレートでカウントを取ってファウルを打たせることが、本当にできました。カットに頼ることなく、ストレート主体でいけたことで、また違った形が出せたと思います」
今季初勝利を挙げた4月29日のアストロズ戦で「ファウルを打たせるカットと結果球にするカットで、出し入れが上手くできたと思います」と大きな収穫を得てから1か月。この間の3登板では、意図的にゾーンより高く外す直球とゾーンより低く曲げるスライダーを織り交ぜる高低の揺さぶりを駆使するなど、置かれている局面での投球に根拠のある配球で腕を振り続けてきた。
スライダーに頼ったのは1年目。力の投球に活路を求めたのは去年のこと。そして、今、菊池は“ピッチングをまかなう”境地に立つ。
「結果を追い求める」と公言したメジャー3年目。9試合で840球。菊池雄星は、序盤のメルクマールを明確にした。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)