弱者が強者に勝つ「言葉」と「数字」 敢えて三振の奇策も…知将が突き詰める確率
自身の経験から痛感「弱者が技術だけで勝負しても結果は見えている」
打撃では三振と凡フライを「無駄なアウト」とし、9回までの27アウトで30%以内に抑える目標を掲げている。「必勝法は分からない」と話す指揮官は「こういうことをすると負けるという必敗法は分かっている。それをできるだけ減らすことが結果的に勝つ方法だと思っている」と説明する。
この信念に基づき、試合では攻撃のサインを細かく出す。事前に集めたデータから最も盗塁成功の確率が高い時に「ディスボール」のサインを出し、状況によっては打者にバットを振らせない「待て」のサインを2球連続出すこともある。
「自由奔放に打たせず、選手には窮屈な思いをさせてしまっている。ただ、勝つために最も確率が高い方法を選ぶ。場面によってはスイングするより見逃し三振の方がいい時や、極端に狙い球を絞ってスイングさせるのがベストな時もある」。選手が納得してプレーできるように、ミーティングで数字を用いて根拠を示している。
チームづくりの根底にあるのは「弱者の戦い方」。愛知県出身の光岡監督は名門・中京大中京から中京大に進んだ。ただ、中京大では1年から中京大中京のコーチに。自身の現役時代を「エリートとは程遠い」と語る。「弱者が強者に勝つために技術だけで勝負しても結果は見えている」。埋められない技術や体力の差を痛感したからこそ、徹底的に考え抜く。
藤枝明誠の野球部に入ってくる選手たちも決してエリートではない。光岡監督も「このチームが、ここまでになるとは思っていなかった」と驚く。それでも、静岡県を制するチームをつくる方法があることを証明している。
(間淳 / Jun Aida)