53日ぶりの白星は苦投の末に… 楽天・田中将大が14年ぶりにボークを記録したワケ

石井監督「6回まで引っ張ってくれたことは評価できる」

 続く2回、先頭の呉念庭は空振り三振に倒れたものの、ファウルで粘って11球を投げさせた。これがスパンジェンバーグの左前打につながり、続く愛斗の時にはカウント0-2という打者不利のカウントでランエンドヒットを敢行。愛斗は左前打で応え、1死一、三塁に。2死後、金子の同点打という形で結実した。源田がカウント1-2から空振り三振に倒れチェンジとなった時にも、一塁走者の金子がスタートを切っていた。こうした動きは田中将の神経を圧迫し、ボディブローのように効いていたはずだ。

 敵将の西武・辻発彦監督は敗戦にも「よく粘り、低めのボールを見極めながら、あれだけの球数を投げさせた。いい攻撃ができた。上出来だと思います」と大きくうなずいた。

 田中将は試合前の段階で、2勝4敗と黒星が先行しながら、防御率は2.90だった。味方打線が点を取ってくれない試合が続き、援護率は2.11。同僚で7勝を挙げている早川の4.33、6勝の涌井の4.99を大幅に下回っていた。そんな田中将が、今季最高の援護を受けた試合に限って失点を重ねるのだから野球は面白い。

 5、6回には立ち直り、それ以上の失点は許さず。石井監督は「なんとか6回まで引っ張ってくれたことは評価できる。アジャストする能力が高いので、次回登板へ向けてしっかり調整してくれると思う」と語った。

 24勝0敗という超人的な成績を挙げた8年前のような、圧倒的な投球スタイルは影をひそめているが、今の田中将には経験に裏打ちされた駆け引きと修正能力がある。西武に対してもこのままやられっ放しでは終わらないはず。ともかく、ようやく戻ってきた勝ち運に乗って東京五輪に臨んでほしい。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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