侍Jの左腕は復調気配、DeNA助っ人は出色の数字 セイバー指標で選ぶセ月間MVPは?
阪神・青柳との争いを制した中日・大野雄、決め手は内野フライ数
投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す「RSAA」を用いる。ここでのRSAAは「tRA」ベースで算出。tRAとは、被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計しており、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標となっている。
各球団のRSAA上位3人は以下の通り。
〇阪神:ガンケル4.00、スアレス2.19、青柳晃洋1.85
〇巨人:メルセデス3.85、ビエイラ2.92、戸郷翔征2.08
〇ヤクルト:田口麗斗2.57、大下佑馬1.47、今野龍太1.18
〇中日:大野雄大4.46、小笠原慎之介1.35、又吉克樹1.13
〇DeNA:三嶋一輝2.51、浜口遥大1.45、阪口皓亮1.31
〇広島:玉村昇悟2.99、コルニエル2.82、島内颯太郎1.66
公式の月間MVPでは阪神の青柳が選出された。登板4、4勝0敗、防御率1.20、WHIP0.90、被打率.185、QS率100%(すべてリーグ1位)、奪三振率7.20(リーグ3位)と素晴らしい成績を残しており納得の受賞だ。
しかし、tRAによる投手評価で最もセ・リーグで高い数値を残したのは中日の大野雄大である。青柳のtRAが1.85に対し、大野は4.46である。この差がどこで生まれたかというと、内野フライの数の差にある。
両投手の打たれた打球を分析する。
〇青柳:ゴロ55、内野フライ3、外野フライ26、ライナー3
〇大野:ゴロ38、内野フライ12、外野フライ27、ライナー4
青柳はGB/FB1.72と、ゴロ率の高さが目立つ投球である。一方、大野のGB/FBは0.88であるが、そのフライの内容を見るといわゆるポップフライが多い。tRAでは運によってはヒットになるかもしれないゴロよりも、アウトにできる確率が高い内野フライを高く評価する傾向になる。その投球内容を鑑みて、公式の月間MVP受賞者である青柳ではなく、セイバーメトリクス目線で選ぶ6月の月間MVPには大野雄大を推挙する。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。