「継承」と「革新」はセット 球団職員20人超のリアルで紡いだDeNA10年の歩み
大きなトピックとなった「STAR☆NIGHT」 2013年はペンライトを投げ込まれるも…
DeNAが球団を継承した頃、野球を巡る状況にも変化が生まれていた。かつての野球1強時代は去り、球場に観客を集めるには殿様商売ではなく、ファンサービスの必要があると誰もが感じ始めていた。そんな中、DeNAが始めたのが、今では人気イベントとなっている「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」だ。第3章に記されている「STAR☆NIGHT」にまつわるエピソードは、二宮氏の心にも強い印象を残した。「20人超の方から伺ったエピソードはどれも面白いものでしたが、書き手として盛り上がりを作ろうとした時、やはり『STAR☆NIGHT』は大きなトピックでしたね」という。
「2013年の『STAR☆NIGHT』はファンに受け入れられず、ペンライトが投げ込まれてしまった。野球の結果が大事という人から見れば、何をやっているんだ? という気持ちも分からなくないですよね。でも、1年経ったら受け入れられるようになる。当日、試合には負けたけどイベントは大いに盛り上がったわけです。だんだん球団がやってきたことが受け入れられ、『STAR☆NIGHT』と同じ仕様のイベントをした2014年の最終戦にはチケットが完売。自分たちがやってきたことが支持された証明になった。これは大きかったと思います」
10年は一区切りではあるが、ここがゴールではない。「継承と革新」は、まだ途上段階だ。取材を通じて球団職員の想いに触れた二宮氏は、ここから先のベイスターズに何を期待するのだろうか。
「取材をして感じたのは、この『再建録』はまさに途中の物語。皆さんに次の話を伺うと『楽しく仕事をしたい』とおっしゃっていました。自分が楽しまないとお客さんを楽しませられない。そこは基本なのかなとすごく感じました。コロナ禍でも『オンラインハマスタ』など新しいことにチャレンジするベイスターズは、僕らがまだ考えつかないようなことができるポテンシャルを持っていると思うので、逆に驚かせてほしい。僕らが思いつかないもので上書きしてほしいですね。
あとは、やはり日本一、優勝。ここは達成していないので。98年のインパクトの大きさを考えれば、優勝すればもっと多くの方にベイスターズを認知してもらえるでしょう。いつでもファンが入るスタジアムになりましたけど、優勝して強いベイスターズを見せることで、さらに愛される球団になると思います。先日、刊行記念記者会見で中畑さんが『3年以内に優勝』とおっしゃっていたので、3年のうちに見てみたいなと思います」
再建に費やされた10年を礎に、次の10年はどんなフェーズを歩むのか。二宮氏もまた、その展開を楽しみに待っている。
書籍タイトル:『ベイスターズ再建録「継承と革新」その途上の10年』
著者:二宮寿朗
発行元:双葉社
価格:1,760円(税込)
(佐藤直子 / Naoko Sato)