「1分を捻出」し、目指す67年ぶりの甲子園 名門進学校・水戸一の強みとは?
試合前日に全体練習は30分だけでも…日頃からの“制約”が生きた
時間や環境に制約がある中での練習は、結果に表れた。今春の県大会。準決勝の常磐大高戦で2点リードの9回1死から逆転を許して関東大会出場は逃したものの、4強入りは45年ぶりの躍進だった。快進撃のきっかけとなったのは、2-0で完封勝利を収めた3回戦の多賀戦。木村監督が選手たちの力を感じたのには、前日の練習に秘密があった。
「学校行事でクラスごとに福島や栃木に行き、帰ってくる時間はバラバラでした。皆、集まって練習ができたのは、30分くらい。それでも次の日に集中して勝つ事ができたのは、日頃から制約があり、イレギュラーな場面の中で、実力を発揮することができているからかなと」。いい流れは、準々決勝の藤代戦でも継続。3-1でリードしていながら雨天ノーゲームで翌日に仕切り直しとなったが、再試合では1-5で4点を追う8回に一挙7点を奪い、8-5で逆転勝利を収めた。
集中力は野球だけではなく、勉強にも生きている。昨年度、東大に合格した23人のうち、1人は野球部出身。難関大への進学実績もある。多くの選手が入学時から成績上位にいたわけではなく、引退後に一気に学力が向上するという。学年順位が下位だった生徒が、国立の北海道大に合格するケースもあった。
3年生にとって集大成の夏は、14日に麻生との初戦を迎える。手応えを感じた春をへて、木村監督は気を引き締める。「春の負けをどう捉えるか。実力自体はあるので、奢らずにやることが大事だと思います」。まぐれとは言わせない。67年ぶりの甲子園出場に向け、“1分を捻出する”野球が茨城をかき回す。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)