劇的勝利も侍Jに残った課題 元代表スコアラーが語る田中と青柳が打たれた原因
田中将大は「配球が変化球に偏ったこと、その変化球自体にキレがなかった」
■日本 7ー6 米国(2日・ノックアウトステージ・横浜)
東京五輪の野球日本代表「侍ジャパン」は2日の準々決勝・米国戦(横浜スタジアム)で、延長10回に甲斐拓也捕手(ソフトバンク)がサヨナラ打を放ち、7-6で勝利を収めた。4日の準決勝では宿敵・韓国と対戦し、これに勝てば銀メダル以上が確定する。劇的な勝利を飾った侍ジャパンだが、苦戦を強いられたことも事実。2009年WBCで日本代表チーフスコアラーを務め世界一に貢献した野球評論家・三井康浩氏は浮き彫りとなった課題を指摘した。
先発の田中将大投手(楽天)は4回途中まで、6三振を奪ったものの6安打を浴びて3失点。メジャー7年間で通算78勝を誇った田中は、米国戦の先発にはうってつけだったが、2点リードで迎えた4回に集中打を浴びた。2死一、二塁から9番アレンに高めに浮いたスプリットを勝ち越し適時二塁打されると、交代を命じられた。
「梅野隆太郎捕手(阪神)のリードもあったのでしょうが、配球が変化球に偏ったこと、その変化球自体にキレがなかったことが打たれた要因ではないかと思います」と三井氏は言う。69球を投じたうち、25球(36%)を投じたスライダーをはじめ、変化球が大半を占め、ストレートはわずか18球(26%)にとどまった。
今大会の使用球(SSK製)は、MLB使用球よりNPB統一球(ミズノ製)に近い形状といわれる。三井氏は「縫い目が高く変化球の曲がりが大きいMLB球に慣れている米国の打者から見ると、この日の田中の変化球はとらえやすかったのではないでしょうか」と、変化球を捉えられた要因を読み解いた。
また、3-3の同点で迎えた5回に3番手として登板した青柳晃洋投手(阪神)も、左の大砲カサスに3ランを浴びるなど1イニングを投げて5安打3失点。7月28日のグループリーグ・ドミニカ共和国戦(2/3回3安打2失点)に続いて失点を重ねた。